大学等で行われる化学実験では 、 正確な定量が要求される基礎的作業が多く存在する 。 本研究では 、 水の 計量操作 、 粉の秤量操作 、 中和滴定操作の 3 つの定量的作業を取り上げ 、 被験者実験の結果を数理的に解析 することで 、 各操作において目標値に近づけていく過程における「調整」に焦点を当てた比較検討を行った 。 水の計量操作では 、 水量の時間変化を指数関数で近似し 、 各試行における目標への近づけ方をその曲率とし て定量化した 。 粉の秤量操作については 、 薬さじを使って粉の投入回数と各回の投入量との関係を 、 P 制御 の考え方を参考にした漸化式で表現し 、 その定数と水の計量操作の曲率との間に相関があることを明らかに した 。 また 、 これらの指標が表す目標値近傍に向けた大きな近づけ方とは別に 、 最終的な目標値に精度よく 合わせる調整には 、 できるだけ少ない量を繰り返し入れるための細かい調整力が求められることが示唆され た 。 中和滴定操作については 、 ビュレット内の水面の下降挙動に基づいて初期・中間・最終の 3 つの段階に 分け 、 各段階における調整の特徴を 、 アイカメラを使った視線解析の結果とあわせて考察した 。 その結果 、 特に初期段階と最終段階では注視の対象が異なっており 、 液面の下降が主な注視対象である初期段階では目 標への大きな近づけ方が 、 またビュレット先端や溶液が入ったビーカーが主な注視対象である最終段階では 正確な中和点の探索のための細かい近づけ方が 、 それぞれ調整の本質であるといった 、 粉の秤量操作と同様 の傾向が示された 。 これらの結果より 、 3 つの操作には 、 扱う対象や目標値の意味合いが異なるものの 、 調 整の過程においては共通性が見られ 、 これらを定量的に解析することによって 、 作業間の類似性や相違 、 実 験作業における個人差 、 などに関する議論が可能になることを明らかにした 。
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