西中国地域には,後期白亜紀の大規模な火山岩とそれに随伴する貫入岩類からなるカルデラ群が分布している.このうち主に周南層群の火山活動に関連した吉部カルデラや山口カルデラは形成時期が少し古く,深いレベルの侵食を受けたことによってカルデラの深部構造,例えばカルデラ壁崩壊堆積物やカルデラ床に貫入した深成岩類,カルデラ境界断層(構造境界)に貫入した環状岩脈(火道内部),さらにはカルデラ床の基盤岩が露出している.一方,中国脊梁山地に分布し,阿武層群の火山活動に関連して形成された生雲カルデラや佐々並カルデラでは削剥量も比較的少なく,カルデラの浅部構造,つまりカルデラを埋積する火山岩層やそれを貫く岩脈,中央溶岩ドームやカルデラ湖の堆積物などがよく観察できる.今回の巡検では,山口県中央部に分布する侵食程度の異なるカルデラ群の地質を観察し,大規模カルデラの深部から浅部までの基本的な構造要素を把握する.