本稿は, 開国後の来日宣教医および来日アメリカ人医師の第1号であるヘボンが本国に送った書簡を中心に, 彼が行った救療事業について述べたものである。ヘボンが行った救療事業は, キリスト教宣教の手段であった。ヘボンは1861年4月から9月までの神奈川宗興寺における6ヶ月間と, さらに1862年12月に横浜の居留地39番に居を移してから1879年春までの合計18年間, 救療事業を行った。ヘボンの書簡の中に記されている内容は幕末・維新期にかけてのわが国の民衆の疾病状況あるいはヘボン自身が行った手術などを詳細に知らせてくれる。ヘボンの行った救療事業は完全無料であり, 当時わが国に欠けていた社会事業を補完するものと考えてよい。
抄録全体を表示