最近のVIS(Vertical Information Systems)における標準規格の構築を対象とする先行研究では、コレクティブ・アクションの枠組みを用い、利害と資源においての非対称性を有する参加者間の合意形成の困難性や、標準規格の開発と普及におけるジレンマが分析され、標準規格構築に内包される課題を克服するための標準化団体におけるインセンティブ構造、意思決定ルール、知的財産に関するルールなどの広義のガバナンスの重要性が指摘されている。自動車エレクトロニクスにおける標準規格構築の事例を上記先行研究の枠組みを用いて詳細に分析すると、コレクティブ・アクションの分析枠組みは日本における標準規格の構築に際しても有用である。多様な選好構造を持つ参加者を貢献させ、標準規格を構築するには、参加者の利害の非対称性を克服するためのインセンティブとしてドミナントユーザーの参加とグローバルな標準化への連結が重要である。