イメージ心理学研究
Online ISSN : 2434-3595
Print ISSN : 1349-1903
16 巻, 1 号
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研究論文
  • −研究の展望−
    畠山 孝男
    2019 年 16 巻 1 号 p. 1-37
    発行日: 2019/10/31
    公開日: 2020/03/18
    ジャーナル フリー

    本稿では自己報告型の主観的イメージテストによって測定されるイメージ能力が,認知的課題ないしは事態をどのように予測するかについて,生理,知覚,学習・記憶,想記,思考,社会的過程に分けて研究の展望を試み,それぞれの領域ないしテーマごとに概括を行いつつ筆者のコメントを付する。結果的に知覚と学習・記憶の領域が中心となる。イメージテストとの関係が豊富に示され,テストの予測力を支持する知見がかなり集積されている状況を見ることができる。鮮明性を問題とした研究が多いが,統御性,常用性(表象型),没入性も取り上げられ,それぞれのテストが予測力を発揮することが知られる。その中で,刺激入力時の特性,知覚との機能的等価性,情報量の多さ,イメージ生成の速さといったイメージの基本的特性は,鮮明性が中心的に担っている。学習・記憶との関係においては,材料の複雑度や処理困難度,意図学習か偶発学習か,イメージ方略以外の方略の適用可能性などが,決定的に重要な要因である。TVIC の測る統御性は,単なるイメージ特性を越えて,認知的・適応的柔軟性に及んでいる。主観的イメージテストが見せる様々な予測力は,イメージが単なる主観的現象にとどまらない実際的な機能を担っていることを明瞭に示していて,かつて展開された主観的イメージテストの妥当性をめぐる論争や,さらにはいわゆるイメージ論争に対して,一つの答えを提供していることが主張される。また,イメージは現象的にも機能的にも多面性を持っていて,主観的テストは認知過程における機能的違いをそれぞれのテストの特性に応じて反映していることが結論され,イメージ個人差の研究はイメージ能力の機序を問題とすべき段階であることが提案される。

  • 田中 輝美
    2019 年 16 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 2019/10/31
    公開日: 2020/03/18
    ジャーナル フリー

    未来の展望には,長く広いものとみる拡散的未来展望と,短い限られたものとみる限定的未来展望がある。本研究は,未来展望と抑うつ傾向との関連を検討した。研究1 は,拡散的未来展望を誘導する近未来を先に想起した大学生163 名と遠未来を先に想起した大学生191 名を比較し,抑うつ傾向の高い者は未来展望を拡散的に捉えにくいこと,抑うつ傾向の低い者は近未来を先にイメージすると未来展望をより拡散的にみるという順序性がみられた。研究2 では,抑うつ傾向を統制して未来展望誘導下の注意バイアスを検討した。抑うつ傾向の高い大学生15 名と抑うつ傾向の低い大学生15 名に,近未来と遠未来のイメージを求めた。その結果,ネガティブ刺激への反応時間において,拡散的未来展望誘導下で抑うつ傾向の高い群に注意バイアスと考えられる有意な差違がみられた。

  • −ブラインドサッカーに焦点を当てて−
    百瀬 容美子, 伊藤 宏
    2019 年 16 巻 1 号 p. 49-60
    発行日: 2019/10/31
    公開日: 2020/03/18
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,運動イメージ生成評価尺度:ブラインドサッカー版(ESMI-BS)を作成することであった。研究1 では,ESMI-BS の信頼性と妥当性が検討された。研究2 では,ESMI-BS とドリブルタイムおよびゴールシュートスキルとの関連が検討された。結果として,ESMI-BS には高い信頼性と妥当性が備わっていた。そして,ESMI-BS の主観イメージとドリブルタイムと間に負の相関が,俯瞰イメージとゴールシュート率の間に正の相関が確認された。こうしたことから,ESMI-BS はブラインドサッカー選手の運動イメージ生成評価に使用可能だと思われた。

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