日本外傷学会雑誌
Online ISSN : 2188-0190
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早期公開論文
早期公開論文の4件中1~4を表示しています
  • 横田 茉莉, 中原 慎二, 三宅 康史, 坂本 哲也, 横田 順一朗, 森村 尚登
    原稿種別: 臨床検討
    論文ID: 38.4_04
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/10/03
    ジャーナル フリー 早期公開

     【目的】頭部外傷の損傷部位・形態別の疫学的記述を行う. 【対象・方法】2004-2019年に日本外傷データバンクに登録され, 頭部にAbbreviated Injury Scale (AIS) 重症度スコア2-6の損傷を有する105,867例を対象に, AISコードで損傷部位・形態別に分類し, 頻度, 年齢, 受傷機転, 院内死亡割合, 合併損傷を記述した. 【結果】部位の9割を大脳が, 形態の5割をクモ膜下出血が占めた. 年齢分布は損傷部位・形態により異なり, びまん性軸索損傷, 硬膜外血腫は若年者が多く, 硬膜下血腫, 脳内血腫, クモ膜下出血は高齢者が多かった. 受傷機転は転倒・転落・墜落が多かった. 院内死亡割合は, 部位別は脳幹で, 形態別は脳腫脹で高かった. 頭部外損傷部位は, 脳神経・下垂体損傷, 硬膜外血腫, 骨折で顔面が多く, 全体では胸部と上肢が多かった. 【結語】損傷部位・形態により年齢分布, 合併損傷パターンが異なっていた.

  • 大森 一彦
    原稿種別: 総説
    論文ID: 38.4_03
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/09/10
    ジャーナル フリー 早期公開

     目的 : 本総説は, 出血を伴う患者へのトラネキサム酸 (TXA) 投与の有効性を論じる. 特に, 外傷患者へのTXA早期投与が死亡率に及ぼす影響を検証し, 本邦の外傷治療における病院前投与の可能性を検討する.

     方法 : 医学中央雑誌, PubMed, Google Scholarを用いて, TXA投与に関する文献のナラティブレビューを行った.

     成績 : TXA早期投与が出血を伴う病態において死亡率を低下させることが示されていた. 特に, 外傷患者への病院前投与は, 死亡率を顕著に減少させることが示されていた. しかし, 本邦ではTXA病院前投与は十分ではなく, 適切な投与タイミングや管理体制の確立が課題として挙げられた.

     結論 : 本総説は, 本邦における外傷患者の治療にTXAを病院前から導入することの重要性を示唆するものである. 病院前TXA投与の導入により, 救急医療の質が向上し, より多くの命が救われる可能性がある. この実現のため, 政策や救急医療体制の見直しが望まれる.

  • 伊藤 優圭, 上田 太一朗, 益子 一樹, 安松 比呂志, 山本 真梨子, 船木 裕, 川口 祐香理, 坂野 高大, 原 義明
    原稿種別: 症例報告
    論文ID: 38.4_01
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/08/08
    ジャーナル フリー 早期公開

     異所性腎動脈は頻度の高い血管破格だが, 鈍的外傷による損傷の報告は少ない. 今回, 鈍的外傷による異所性腎動脈損傷を経験したため報告する. 24歳男性が, 木片が腹部に当たり受傷した. 造影CTで右腎下極梗塞, Zone1-2に跨がる後腹膜血腫, 右腎動脈本幹より遠位で腹部大動脈から分岐する血管の途絶像を認めた. 血管造影でも同様の血管途絶像があり, 異所性腎動脈損傷と診断したが, 塞栓術は困難で, 十二指腸損傷も合併していたため開腹術により中枢側断端を結紮した. 本症例のように, 腎梗塞部に一致しない局在の後腹膜血腫を認めた際は, 異所性腎動脈損傷を想定する必要がある. また, 異所性腎動脈の血行再建は全例で必要ではない.

  • 松永 裕樹, 川上 歩, 宝田 秀憲, 永井 航, 小森谷 健太, 大倉 淑寛, 杉山 和宏
    原稿種別: 臨床検討
    論文ID: 38.4_02
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/08/08
    ジャーナル フリー 早期公開

     背景 : 情報技術は進化しvirtual realityの分野は格段の進歩を遂げている. カメラ, ビューワーや編集ソフトは高価な専門機器が多かったが, 家電量販店で販売されるもので十分実用できるようになった. Head-mounted display (以下HMD) の圧倒的な没入感は既存動画と別次元で, その場にいると錯覚してしまう. 一度動画を作成すれば, 時, 場所, 人を選ばずに高度な緊急手技の追体験も可能となる.

     目的 : 家電量販店で容易に入手できる機器で, HMD上に投影可能な外傷動画シミュレーターを作成し効果を検証する.

     対象・方法 : 当科医師10名に, 作成したHMDシミュレーターの体験後にアンケート調査を実施した.

     結果 : 体験者はいずれも効果的と答え, HMDの目新しさから興味深く体験できた, リアリティがあり能動的であるなど好印象であった.

     結論 : 容易に入手できるもので構築したHMDシミュレーターは有用であった. 特に救急では重症, 稀な症例, 感染症, 被曝などの点でメリットが享受される可能性がある.

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