日本健康開発雑誌
Online ISSN : 2434-8481
Print ISSN : 2432-602X
ISSN-L : 2432-602X
早期公開論文
早期公開論文の6件中1~6を表示しています
  • 松橋 圭子, 種市 慎也, 田中 稲子
    論文ID: 202546G06
    発行日: 2025/02/14
    [早期公開] 公開日: 2025/02/14
    ジャーナル フリー 早期公開

    背景・目的 都心部の保育施設では、十分な室内面積や換気量の確保が難しい場合があり、子どもや保育者の様々な感染リスクが懸念される。本研究では、コロナ禍前後の感染症対策に対する保育者の意識と保育施設が立地する環境特性に着目し、保育施設が抱える課題の整理を目的とする。

    方法 筆者らの実測結果より、保育室のCO2濃度や温湿度に差がみられ、換気をはじめとする感染症対策の意識に違いがあると予想された横浜市の5施設を調査対象とした。各施設の園長を対象に、新型コロナウイルスに対する感染症対策やコロナ禍前後での意識変化、コロナ対策での困りごと等に関するヒアリング調査を実施した。

    結果 いずれの保育施設も外部からの交通騒音や保育室からの音漏れを気にする必要のない立地環境であったが、積極的に窓開け換気を実施していたのは3施設であった。開閉可能な窓が限られていることから、自由に窓開け換気が行えない施設も存在した。しかし、どの施設においてもコロナ禍を経たことで換気意識が高まるとともに、子どもや保育者自身の健康意識、さらには保育者同士の連携意識の向上といった意識変化が確認された。

    考察 立地環境や施設特性に関わらず、保育施設では換気方法に関する多くの疑問が生じていた。施設を管理する立場として、空気環境の管理に関する知見や情報を求める切実な姿も窺えたことから、保育者にも理解しやすい情報発信の必要性が明らかとなった。

  • 青木 駿介, 野々山 昌生, 早坂 信哉
    論文ID: 202546G05
    発行日: 2024/11/20
    [早期公開] 公開日: 2024/11/20
    ジャーナル フリー 早期公開

    背景・目的 入浴は心身の健康に対して多くの効果がある。入浴方法も多様化し、特にマイクロバブル(MB)入浴はさら湯よりも温浴効果や心理的健康効果が高く、目的に合わせた効果的な入浴が期待できる。本研究では、湯温・入浴時間の異なるMB入浴とウルトラファインバブル(UFB)シャワー浴が生体情報に与える影響を比較調査し、その身体的・心理的健康効果を検証することを目的とした。

    方法 健康な男女12名を対象に、湯温・入浴時間の異なるさら湯・MB入浴・UFBシャワー浴での同一被験者内ランダム化比較試験を実施した。入浴前後には、心身の状態を確認するため、心拍・体温・脳波の生体情報計測を行った。また入浴前後30分毎にPVT(Psychomotor Vigilance Test)による反応速度検査と、SAM(Self-Assessment Manikin)テストとVisual Analog Scale (VAS)により自分の状態に対する主観評価を行った。

    結果 心拍数は他の入浴方法と比較してMB入浴は減少が緩やかだった。また、LF(Low Frequency Power)とHF(High Frequency Power)の比LF/HFはUFBシャワー浴のみ増加傾向が確認された。体表温は、さら湯・MB入浴時に増加していた。脳波では、MB入浴・UFBシャワー浴に対して心理的好感が高く、UFBシャワー浴では集中度が高い状態が維持されていた。PVT反応速度では、UFBシャワー浴の際に入浴直後に向上することが確認された。主観評価では、MB浴においては心理的・身体的にポジティブな変化を実感していること、UFBシャワー浴においては入浴直後に覚醒感が感じられるが、その他の身体的な影響は低いことが確認された。

    考察 MB入浴は、低温でも持続的な温熱効果と高いリラクゼーション効果が得られるため、高齢者でも安全に利用でき、多忙な人々の休息効果を高めるのに有効な入浴方法と考えられる。一方、UFBシャワー浴は身体的負担が少なく、短時間で覚醒効果を高める入浴方法としてリフレッシュしたい朝の利用が適している可能性が示唆された。

  • 早坂 信哉, 三橋 浩之, 早坂 健杜, 加藤 典嗣
    論文ID: 202546G03
    発行日: 2024/10/28
    [早期公開] 公開日: 2024/10/28
    ジャーナル フリー 早期公開

    背景・目的 最近日本において流行しているサウナ入浴法(サウナの後、水風呂に入浴するサウナ温冷交代浴)があるが、このサウナ入浴の自律神経への影響について学術的な研究は少ない。本研究では、浴槽を使った温冷交代浴とサウナ温冷交代浴を実施しそれぞれの前後で自律神経機能を測定し入浴法ごとの前後比較、入浴法による違いの群間比較をし、自律神経機能の変化を明らかにすることを目的とした。

    方法 浴槽温冷交代浴(40℃5分間全身浴→16℃冷水浴1分を2回繰り返し→最後は 40℃全身浴3分で終了)、サウナ温冷交代浴(90℃5分間サウナ浴→16℃冷水浴1分→休憩5分を2回繰り返し)を男女16名(男8名、女8名)に別日で行い、スマートウォッチ型デバイスで入浴前、入浴終了直後、入浴終了30分後に心拍を測定し、自律神経活動を解析した。それぞれの介入の前後比較、介入別の群間比較を二元配置分散分析で行った。

    結果 心拍数は浴槽温冷交代浴30分後(p=0.004)、サウナ温冷交代浴直後(p<0.001)、30分後(p<0.001)とも入浴前と比較し有意に低下していた。交感神経指標であるcoefficient of component variance low-frequency component / high-frequency component(CCVL/H)は浴槽温冷交代浴で入浴直後、入浴終了30分後に順次緩やかに低下していた。サウナ温冷交代浴では入浴直後に有意差(p=0.048)をもって急に低下した後、入浴終了30分後には横ばいとなった。群間比較では浴槽温冷交代浴と比較し、サウナ温冷交代浴の入浴直後で有意にCCVL/Hが低かった(p=0.011)。

    考察 サウナ温冷交代浴では高温サウナ室から冷水浴を行うことで大きな温度差で交感神経が強く刺激され、その後に自律神経反射として交感神経活動が抑制され副交感神経が亢進してCCVL/Hが入浴終了直後に大きく低下した可能性も考えられる。サウナ後の強いリラックス感はこうした自律神経活動の変化によってもたらされる可能性も考えられた。

  • 宮川 哲弥, 早坂 信哉, 堀口 祐太, 土田 夕紀
    論文ID: 202546G04
    発行日: 2024/11/01
    [早期公開] 公開日: 2024/11/01
    ジャーナル フリー 早期公開

    背景・目的 本研究は、子ども家庭センター等職員を対象とし、市民との面接の研修としてのバーチャルリアリティロールプレイ(VRRP)と対面ロールプレイ(対面RP)の比較検討及び心拍変動解析による生理指標の測定を通して、VRRPの特性を検討することを目的とした。

    方法 大田区・杉並区子ども家庭支援センターで勤務している相談員20名を対象とし、架空事例にてバーチャルリアリティロールプレイと対面ロールプレイを各回ごとに、実験前安静1分→実験7分前後→実験後安静1分で実施した。心拍変動解析にて心拍数(HR)、交感神経指標 (LF/HF)、副交感神経指標 (HF)測定した。

    結果 バーチャルリアリティロールプレイは実験前→実験中においてHR、LF/HFは有意に上昇しており、HFは有意に下降した。対面ロールプレイでも同じく実験前→実験中有意に上昇していた(p=0.04)。実験中→実験後においても、HRは有意に下降し、HFも上昇し同様に有意差が確認され、バーチャルリアリティロールプレイは対面ロールプレイと同等の心身への影響があると示唆された。一方、項目比較においてバーチャルリアリティロールプレイは実験中・実験後LF/HFは対面より有意に低く、実験後HFも有意に上昇した。

    考察 VRRPは対面RPと比較し心理的負担が少なく訓練後平常に戻りやすいことが示唆された。VRRPはオンラインで研修が実施でき、研修の録画を簡単にできるなど運用面でも有用性があり、今後活用が期待できると考えられた。

  • 石澤 太市, 小番 美鈴, 奥川 洋司, 中西 信之, 松本 圭史, 早坂 信哉
    論文ID: 202546G02
    発行日: 2024/09/18
    [早期公開] 公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 日本人における入浴は、体の清浄だけでなく、日常のストレスや疲労からの回復を実感できる浴槽浴(以下:入浴)が習慣化している。本研究は、入浴実態と健康に関する調査から入浴頻度と入浴時の体温上昇の観点で解析を行い、健康維持のための入浴法を提案することを目的とする。

    方法 対象者は40歳以上の健常な男女で、自記式アンケートにより年齢・性別・入浴頻度(週あたりの浴槽浴回数)・湯温度・入浴時間(湯につかっている時間)・水位(湯につかる深さ)を調査した。これらの結果を既報告の計算式に代入し、入浴時の体温上昇値を推定した。さらに、体温上昇推定値に頻度を乗じて週累積体温上昇値を算出した。健康状態については、主観的健康感、QOL26、POMS2、ロコモ25、歩行試験、加齢に伴う意識調査、脳活動試験、健康診断による脂質値の調査等を行った。解析は、入浴頻度を週7回以上と7回未満の2群に分け、健康状態の各項目でt検定を行った。また、週累積体温上昇値については、男女別に週累積体温上昇値を平均値で2群に分け、健康状態の各項目でt検定を行った。

    結果 入浴頻度では、週7回以上の群で主観的健康感、QOL26、POMS2、歩行試験において良好であり、健康診断の脂質値が有意に低い項目を認めた。また、週累積体温上昇値では、女性の高値群においてQOL26、ロコモ25が良好であった。男性の高値群においてはPOMS2、加齢に伴う注意力低下の意識、脳活動が良好であった。また、男女の高値群で健康診断の脂質値で低い項目を認めた。

    考察 入浴頻度および入浴時の体温上昇と心身の健康状態との間に関連があることが認められた。測定指標である歩行状態、脳活動、脂質関連値は、フレイルや認知機能およびメタボリックシンドローム等と関連性があることより、入浴習慣が健康寿命の延伸と関連性があることが示唆された。

  • 松橋 圭子, 高橋 風葉, 田中 稲子, 大西 達也
    論文ID: 202546G01
    発行日: 2024/07/30
    [早期公開] 公開日: 2024/07/30
    ジャーナル フリー 早期公開

    背景・目的 保育者のバーンアウト(燃え尽き症候群)について関心が高まっている。保育者のストレス要因として対人関係や待遇等の課題が挙がる一方、働く場として保育施設の物理的環境とストレスとの関連に着目した研究は僅かである。本研究では、保育者を取り巻く音環境とストレスの実態と関係性を明らかにすることを目的とした。

    方法 横浜市の保育施設を対象に、施設管理者と保育者向けの2種類のアンケートを実施した。施設管理者84名より施設の特徴や音環境に対する配慮について、保育者591名からは保育者個人の音に対する意識、日頃のストレスや勤務中の休憩状況に関する回答を得た。

    結果 保育者の仕事に対する満足度を目的変数とし、20のストレッサーに対する各度合いを説明変数として重回帰分析を行った結果、最も影響を与える要因は「職場の上司との関係」で、次いで「勤務中の休憩の質」であり、「響きやうるささなどの音環境」は、「給与」と同程度の3番目の影響度が認められた。音環境に関する施設の工夫の有無と、保育者の音漏れに対する心配の有無に関してカイ二乗検定を行った結果、「室内の子どもの声」について有意差が認められた。

    結論 既往研究では保育者のストレス要因として対人関係や待遇面が取り上げられてきたが、音環境の整備や休憩場所の確保など、保育者のストレスを緩和するために、施設の物理的環境からもアプローチの可能性があることが、本研究によって示された。

feedback
Top