背景・目的 ウェルネスツーリズム及び環境省が提案する「新・湯治」は、ともに地域資源を活用した体験を通じた人々の健康増進を目指している。本研究は、アンケート調査データをもとに、人々が温泉地で実施した活動に伴う主観的な健康状態の変化を分析したうえで、温泉地における地域資源を活用した取り組みへの示唆を得ることを目的としている。
方法 環境省が実施している「全国『新・湯治』効果測定調査プロジェクト」により2018年度から2022年度までに得られた18,620件のアンケート調査データのうち、一部設問に無回答だったデータを除く12,315件を対象にカイ二乗検定を用いて入浴以外の活動の有無による主観的な健康状態の変化について群間比較を行い、p<0.05の場合に有意と判断した。
結果 入浴のみをした人が6,227人で、入浴以外の活動も行った6,088人よりやや多かった。主観的な健康状態は、滞在中に入浴以外の活動も行った人の方が改善傾向にあり、「むくみ」以外の改善者割合は非参加者よりも有意に高かった。「運動」参加者は「食欲」(p=0.036)、「周遊観光・買い物等」参加者は「食欲」(p=0.008)、「学ぶ活動・セミナー」参加者は「食欲」(p=0.047)、「冷え」(p=0.021)、「コリや痛み」(p=0.040)、「むくみ」(p=0.044)の改善者割合が非参加者よりも有意に高かった。
結論 温泉地で入浴以外の活動も行うことの主観的な健康増進効果が示唆され、ウェルネスツーリズム及び「新・湯治」の目指す方向性を支持する結果となった。
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