日本遺伝看護学会誌
Online ISSN : 2436-9098
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ISSN-L : 1881-3267
15 巻, 2 号
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研究報告
  • 沓脱 小枝子, 辻野 久美子, 村上 京子, 飯田 加寿子, 遠藤 由美子
    原稿種別: 研究報告
    2017 年15 巻2 号 p. 57-67
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    目的:プラダー・ウィリー症候群のある児の乳児期に焦点を当て、母親の育児の体験やその中での心の動きを明らかにし、そこから本疾患における乳児期の看護支援について考察する。

    方法:プラダー・ウィリー症候群の家族会を通じて面接調査を依頼し、承諾の得られた母親17名を対象にインタビューを実施した。インタビューで得られた内容をKrippendorffの内容分析の手法で分析した。

    結果および考察:乳児期における母親の思いとして《育児の困難さを実感》、《わが子の障害を知った衝撃》、《情報不足からくる困難》、《医療への満足》、《医療への要望》、《前向きに捉える》、《育児意欲の高まり》、《将来を案じる》、《大変さを理解されにくい》、《障害受容における苦悩》、《家族への感謝》、《遺伝ではない安堵》の12 のカテゴリが生成された。《育児の困難さを実感》に類する内容が最も多く語られ、筋緊張低下とそれに伴う哺乳障害に対する育児の困難さが伺えた。看護職者は、退院後に家庭でも十分な哺乳量を確保できるように、母親と家族に対して具体的な授乳方法の指導を行う必要がある。本疾患は、生後数か月経過した頃から筋緊張低下や哺乳障害等の症状が徐々に改善する特徴がある。母親は出来事を《前向きに捉え》、わが子を可愛いと思うなど《育児意欲の高まり》が見られた。看護職者は、遺伝に関する知識や疾患の特性を十分に理解し、リハビリや療育の専門職とともに児の発達を促す支援を提供しながら、家族の児に対する愛情や育児意欲を引き出すように関わることが重要である。

  • 浅野 浩子, 中込 さと子, 柊中 智恵子, 佐々木 規子, 小笹 由香
    原稿種別: 研究報告
    2017 年15 巻2 号 p. 68-76
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    目的:新生児医療に携わる新生児集中ケア認定看護師の遺伝看護ケアの現状から、遺伝看護上の問題を明確にする。そして、新生児期の遺伝看護教育の学習課題を検討し、教育プログラム作成への示唆を得る.

    方法:新生児集中ケア認定看護師5名を対象にした計2回のフォーカス・グループ・インタビュー(focus group interview:以下FGIとする)を行い、さらに質的データについて、質的内容分析を行った。

    結果:FGIでは、胎児異常の診断を受けた子どもの治療や養育を受けいれることが困難な両親、また、予後不良であると診断された子どもの治療の胎児異常の診断を受けた子どもの治療や養育を受けいれることが困難な両親に、NICUの看護師が、どのような関わりができるかについて話し合われた。FGIの分析の結果、新生児集中ケア認定看護師の遺伝看護ケア上の問題が17項目挙げられた。

    考察:新生児期の遺伝看護ケアに関する学習課題として、①両親・家族をケアするための遺伝リテラシー、②両親が遺伝性疾患を持つ子どもの養育を始める過程の支援、③新生児期以降の遺伝性疾患を持つ子どもの養育支援、④家族中心のケアのためのシステム構築、⑤数か月の命と予想される子どもと親のQOLの質を高めるケアに関する教育が必要であることが分かった。新生児期の臨床において、水準の高い看護を実践し、看護実践を通して看護職に対し指導を行う役割を持つ新生児集中ケア認定看護師が、これらの課題を達成できるような教育が必要であり、実践活動を通して看護師の指導や相談活動をすすめる役割が担えるような学習を支援することが必要であると考える。

  • 浅野 浩子, 中込 さと子, 柊中 智恵子, 佐々木 規子, 小笹 由香
    原稿種別: 研究報告
    2017 年15 巻2 号 p. 77-86
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    目的:母性看護専門看護師の遺伝看護ケアの現状から、周産期医療に携わる遺伝看護ケア上の問題を明確にする。そして、周産期の遺伝看護教育の学習課題を検討し、教育プログラム作成への示唆を得る。

    方法:母性看護専門看護師12名を対象にした計2回のフォーカス・グループ・インタビュー(focus group interview:以下FGIとする)を行い、さらに研究への参加を辞退した1名の質的データを除外して、質的内容分析を行った。

    結果:FGIで取り上げられたテーマは、妊娠初期の出生前診断や胎児異常の診断に関わる看護職者が少なく、看護職者がどのように妊娠初期の妊婦へのケアを行うことが可能であるかであった。また、看護職者が出生前診断に関わっていくとき、どのようなケアの仕組みを作っていくか、看護職者が施設のマンパワーの状況に応じて、どのように妊娠初期の妊婦に関わる体制を作るか、さらに、看護職者が、母親の育児支援をどのように行うかについて討議された。FGIの分析の結果、21項目の遺伝看護ケア上の問題が挙げられた。

    考察:周産期領域の遺伝看護ケアに関する学習課題として、①遺伝学的検査、②遺伝性疾患、③遺伝カウンセリング、④妊娠初期の妊婦ケアの意義、⑤胎児異常の診断を受けた両親へのケア、⑥先天異常を持つ子どもの養育過程支援、⑦胎児と死別した両親のグリーフケア、⑧次子の妊娠へ不安を持つ両親への支援に関する教育と、⑨看護職者への遺伝看護ケアのサポートの必要性が検討された。まず、周産期の臨床の高度看護実践と看護教育をすすめる役割を持つ母性看護専門看護師が、これらの課題を達成できるような教育が必要であり、母性看護専門看護師の実践や調整、倫理調整の役割を通して、周産期医療に携わる助産師や看護師などへの遺伝看護ケアの相談や教育を進められる役割が担えるような学習を支援することが必要であると考えられる。

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