2017 年 15 巻 2 号 p. 57-67
目的:プラダー・ウィリー症候群のある児の乳児期に焦点を当て、母親の育児の体験やその中での心の動きを明らかにし、そこから本疾患における乳児期の看護支援について考察する。
方法:プラダー・ウィリー症候群の家族会を通じて面接調査を依頼し、承諾の得られた母親17名を対象にインタビューを実施した。インタビューで得られた内容をKrippendorffの内容分析の手法で分析した。
結果および考察:乳児期における母親の思いとして《育児の困難さを実感》、《わが子の障害を知った衝撃》、《情報不足からくる困難》、《医療への満足》、《医療への要望》、《前向きに捉える》、《育児意欲の高まり》、《将来を案じる》、《大変さを理解されにくい》、《障害受容における苦悩》、《家族への感謝》、《遺伝ではない安堵》の12 のカテゴリが生成された。《育児の困難さを実感》に類する内容が最も多く語られ、筋緊張低下とそれに伴う哺乳障害に対する育児の困難さが伺えた。看護職者は、退院後に家庭でも十分な哺乳量を確保できるように、母親と家族に対して具体的な授乳方法の指導を行う必要がある。本疾患は、生後数か月経過した頃から筋緊張低下や哺乳障害等の症状が徐々に改善する特徴がある。母親は出来事を《前向きに捉え》、わが子を可愛いと思うなど《育児意欲の高まり》が見られた。看護職者は、遺伝に関する知識や疾患の特性を十分に理解し、リハビリや療育の専門職とともに児の発達を促す支援を提供しながら、家族の児に対する愛情や育児意欲を引き出すように関わることが重要である。