本翻訳はシュトラウス学派によるテクノロジーに関する論文集,
Technology in the Western Political Traditionに収められているスタンリー・ローゼンの論文 “
Technē and the Origins of Modernity” の全訳である.本論文においてローゼンは,プラトンが近代に与えた影響を考察している.彼はアリストテレスにおいて提示された「理論(theory)」と「実践(practice)」という区分に加えて,ポイエーシスに関わる「制作(production)」という独自の視点を導入し,その三区分の分離と結合の変化を通じてプラトンやトゥキュディデスの読み直しを行っている.その帰結として,プラトンにおいては「理論」と「制作」の関係性が曖昧にされていると同時に,その「制作」という思考がデカルトやマキャベリなどの近代政治哲学者に受け継がれ,近代性の発芽に与していると指摘している.一般に数学はローゼンの区分で言うところの「理論」に属すると理解されているので,一般的な理解と異なり,近代性はプラトンの数学もしくは理論ではなく,制作からの影響がより重要であるとの見解を結論として提示している.
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