馬ノ傳染性貧血病原體トシテ報告セラレタル純培養「スピロヘータ」ヲ培出センガ爲メ傳染性貧血病馬九頭ノ血液及同一頭ノ肝臟、脾臟、腎臟ヲ用毛野口氏固形培養基外數種ニ於テ接種培養ヲ行ヒ更ニ對照試驗トシテ健康馬六頭、家兎及海冥各二頭ノ血液、本病馬, 健康馬及家兎各一頭ノ血清竝ニ傳染性貧血病馬及健康馬各一頭ノ血液ニ消毒藥ヲ混加シタルモノヲ「スタム」トシテ前同樣ノ培養ヲ試ミタル結果、野口氏固形培養基ニ於テハ接種材料ガ病馬タルト健康馬タルトニ論ナク本病ニ全然感受性ヲ有セザル家兎及海冥ノ血液ヲ接種スルモ容易ニ之ヲ培出スルヲ得又馬ノ同血液ニ石炭酸 (二%)、「フォルマリン」(一%) 及昇汞 (一‰) ヲ混加シタルモノヲ接種シタルモノニ於テモ亦略々同樣ノ成績ヲ得タリ之ニ反シ血清及實質臟器ヲ接種シタルモノニ在テハ「スピヘータ」様體現ハル、コトナク其他ノ培養ニ在テモ亦同ジ。
「スピロヘータ」樣體ハ主トシテ培養基ノ血漿浸潤部罕ニハ穿刺溝内ニ於テ多數發生スルモ以上ノ部位以外ニ於テハ之ヲ檢出スルコト能ハズ更ニ之ヲ野口氏固形培養基ニ移植スルモ増殖ヲ認メズ此「スピロヘータ」樣體ヲ暗視野ニテ照射スレバ銀白色ヲ呈シ光輝アル顆粒ニ富ミ波状屈曲ヲ呈シ體ノ兩端尖鋭トナリテ終絲樣體ニ移行シ一見頗ル「スピロヘータ」ニ類似スルモ全然運動性ヲ缺知シ普通ノ「アニリン」色素溶液ニテ染色シフオンタナー氏法ニ憑ル染色ハ標本ノ固定法若クハ硝酸銀「アンモニア」水ノ製法ニ特殊ノ手段ヲ施スニアラザレバ其成績不等ニシテ親野鮮麗ナラズ。
本培養「スピロヘータ」樣軆ハ健康馬ニ接種スルモ傳染性貧血ヲ發病スルコトナク培養七ケ月ニ渉ルモ其形態竝ニ染色性ニ變化ナク決シテ崩壊若クハ消失スルコトナシ一方此「スピロヘータ」樣軆ハ單ニ枸櫞酸「ナトリウム」加血漿中ニ凝出シ又同血漿ヲ腹水中ニ注加スレバ極メテ達ニ現田ス而シテ此兩者ト野口氏固形培養基ニ現出スルモノトハ鏡檢竝ニ染色上ノ所見全ク一致スルヲ認メタリ。著者ハ以上ノ實驗成績ヨリ到底之ヲ「スピロペータ」トハ認メ難ク素ヨリ傳染性貧血ノ病原軆トナスヲ得ズ恐ラク培養ニ供シタル血漿中ヨリ凝出セル纖維素ニ外ナラズト推定セリ。

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