目的:超音波造影剤(Ultrasound Contrast Agents: UCA)は,開発時に炎症が確認されているなど,UCA投与の潜在的な有害作用,特に臓器局所への有害作用に関する懸念が残っている.本研究では,UCA投与における炎症性遺伝子の発現に焦点を当て,主要臓器に及ぼす影響を評価した.
対象と方法:Sprague-Dawleyラットを用い,UCA投与群とControl群に分けた.UCA投与(Sonazoid®,0.015 mL/kg)後に10分間超音波照射した.Control群にはUCA投与の代わりに,生理食塩水を0.015 mL/kg投与した.その後,主要臓器(心臓・肺・肝臓・腎臓)を摘出し,MCP-1, IL-6, IL-10, TNF-αの遺伝子発現を評価した.
結果と考察:UCA投与群では,Control群と比較してすべての臓器でMCP-1, IL-6, IL-10が有意に高値を示した.TNF-αは肝臓と肺で有意な高値を示した.この結果から,UCA投与により臓器局所での炎症が惹起され,特に肝臓および肺における傷害が顕著であることを明らかにした.毛細血管内でUCAのマイクロバブルが滞留・集積し,血管内皮傷害などが要因で炎症を惹起している可能性がある.
結論:本研究は,UCA投与における主要臓器局所への弊害の新たな知見を提示した.UCA投与による炎症性遺伝子の発現は主要臓器局所で増加し,その傷害は特に肝臓および肺において顕著であることが確認された.
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