呼吸理学療法学
Online ISSN : 2436-7966
最新号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
ポジションペーパー(二次出版)
  • 佐藤 晋, 宮崎 慎二郎, 玉木 彰, 吉村 芳弘, 荒井 秀典, 藤原 大, 桂 秀樹, 川越 厚良, 神津 玲, 前田 圭介, 小川 純 ...
    2024 年 3 巻 1 号 p. 1-20
    発行日: 2024/03/22
    公開日: 2024/03/22
    ジャーナル フリー

    呼吸筋力低下と呼吸筋量減少が示唆される病態を呼吸サルコペニアと定義した。呼吸サルコペニアに関する基礎的な知識,診断・評価法,メカニズム,各呼吸器疾患への関与,介入・治療法,そして今後の展望について概説し,現時点での統一見解をまとめたポジションペーパーを作成した。呼吸筋力低下と呼吸筋量減少を認めると,呼吸サルコペニアと診断される。呼吸筋量の測定が難しい場合は,四肢骨格筋量を代用として使用できる。呼吸筋力低下と四肢骨格筋量の減少を認めた場合,「呼吸サルコペニアの可能性が高い」と診断する。呼吸筋力低下のみ認めて呼吸機能低下を認めない場合,「呼吸サルコペニアの可能性あり」と診断する。呼吸筋力は,最大吸気口腔内圧と最大呼気口腔内圧で評価する。超音波診断装置とコンピューター断層撮影は,呼吸筋量を評価するために使用される。ただし,呼吸筋量減少のカットオフ値を提案するにはデータが不十分である。

原著
  • 尾池 健児, 石橋 修, 濱野 一平, 村野 勇, 海藤 章郎
    2024 年 3 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2024/03/22
    公開日: 2024/03/22
    ジャーナル フリー

    目的:食道癌に対する開胸食道切除術は高侵襲であり術後の離床遅延が報告されている。当院では2019年4月より早期離床プロトコルを導入した。本研究では開胸食道切除術後患者における早期離床プロトコル導入が術後離床,術後呼吸器合併症と退院時身体機能に及ぼす影響を検討することを目的とした。

    方法:開胸食道切除術を受けた39例を対象とし,早期離床プロトコル導入後を早期離床群,導入前を従来群とし患者背景,術後経過,退院時身体機能について2群間で比較した。

    結果:早期離床群は従来群と比較し,人工呼吸器装着時間[49.0(40.3-63.7)時間vs.73.8(51.2-75.9)時間]と端座位開始[2(1.5-3.0)日vs.4(3.0-5.0)日]・立位開始[3(1.5-3.0)日vs.5(3.3-6.0)日]・歩行開始[4(2-5)日vs.6(5.0-7.0)日]までの日数が有意に短縮した。

    結論:食道癌に対する開胸食道切除術後患者では,早期離床プロトコルの導入が術後離床までの日数と人工呼吸器装着時間を短縮させる可能性がある。一方で,術後呼吸器合併症と退院時身体機能には影響を及ぼさない可能性がある。

  • 江越 正次朗, 阿波 邦彦, 堀江 淳, 金子 秀雄, 林 真一郎
    2024 年 3 巻 1 号 p. 30-40
    発行日: 2024/03/22
    公開日: 2024/03/22
    ジャーナル フリー

    はじめに:佐賀県,福岡県筑後地区(筑後地区)の呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の現状と,呼吸器関連専門資格を有している療法士(有資格セラピスト)の有無によって呼吸リハの内容に差異が生じているかは不明である。

    方法:佐賀県,筑後地区の呼吸リハ料届出施設に,呼吸リハの提供方法,患者評価,プログラム構成要素,品質保証に関するアンケート調査を実施した。また,有資格セラピストの有無での比較を行った。

    結果:身体活動性,患者の知識,疾患特異的ADL評価,フレイル,健康関連QOL,機器下肢筋力測定の評価の実施が少ない傾向であった。また,セルフマネジメント教育の実施が少ない傾向であった。有資格セラピストがいる施設では,運動負荷試験のみ実施が有意に多かった(p=0.024)。

    結論:セルフマネジメント教育の普及率向上が必要である。また,有資格セラピストの存在と呼吸リハの質との関連については限定的である。

症例報告
  • 伊藤 豪司, 永井 公規, 掬川 晃一, 野崎 和昭, 坂下 智哉, 上野 竜治, 片岡 研二, 廣島 拓也
    2024 年 3 巻 1 号 p. 41-50
    発行日: 2024/03/22
    公開日: 2024/03/22
    ジャーナル フリー

    はじめに:COVID-19重症患者に対しては,人工呼吸器などの集中治療が必要となり運動機能,日常生活活動(ADL)などが低下する。そのため,急性期のみの入院期間では十分な運動機能,ADLの回復や退院支援を実施することは困難である。

    症例:回復期リハビリテーション病棟に入院した,人工呼吸器管理を必要としたCOVID-19重症患者の3症例である。3症例ともに集中治療後症候群などの他にも多様な合併症を有していた。

    結果:初回評価から最終評価の順で示す。Medical Research Council sum scoreは症例1は44点から60点,症例2は42点から48点,症例3は46点から60点,Functional Independence Measureは症例1は76点から116点,症例2は77点から122点,症例3は77点から123点へ改善した。

    結語:人工呼吸器管理を必要としたCOVID-19重症患者に対して,回復期リハビリテーション病棟での集中的なリハビリテーションによって運動機能,ADLの回復が得られた。

  • 陶山 和晃, 縄田 康朗, 新貝 和也, 犬塚 秀太, 橋本 修平, 菊地 結貴, 吉嶺 裕之, 神津 玲
    2024 年 3 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 2024/03/22
    公開日: 2024/03/22
    ジャーナル フリー

    遠隔的呼吸リハビリテーション(PTR)は従来の呼吸リハビリテーションの代替手段となり得るが,本邦ではその前例がない。本報告では,独自のPTRシステムを構築・導入した慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の臨床経過について報告した。70歳代のCOPD患者に対し,遠隔診療システムをインストールしたタブレット端末を貸与し,2回/週・計8週間のPTRプログラムを実施した。その結果,階段昇降時の呼吸困難の減少や運動の習慣化を認め,8週間後の運動耐容能や健康関連生活の質は臨床的最小有意差を超える有意な改善が得られた。さらに,1日あたりの平均歩数や強度別活動時間も大幅な増加を認めた。PTRの導入により,自宅に居ながら遠隔的かつ直接的な運動プログラムが可能となり,本症例の行動変容に繋がったことが改善の主な要因と考えられる。PTRはこれまで課題とされてきた呼吸リハビリテーションの提供機会やアクセス制限を解消する有効な手段となり得る。

  • 伊藤 豪司, 永井 公規, 片岡 研二, 廣島 拓也
    2024 年 3 巻 1 号 p. 60-68
    発行日: 2024/03/22
    公開日: 2024/03/22
    ジャーナル フリー

    目的:集中治療の進歩に伴い救命率が改善した一方で,合併症などの報告も多くされている。今回,回復期リハビリテーション病棟での集中的な回復期リハビリテーションにより身体機能・日常生活活動(ADL)が改善した重症肺炎後に集中治療室獲得性筋力低下(ICU-AW)を呈した1例を経験したため報告する。

    症例:前医にて重症肺炎後にICU-AWを呈し,97病日に当院回復期リハビリテーション病棟へ転院となった。著明な身体機能・ADL障害を認めていたが段階的に運動療法を実施した。

    結果:初回評価から最終評価の順で示す。Medical Research Council sum scoreは30点から54点,機能的自立度評価法は39点から100点へ改善した。

    結語:重症肺炎後にICU-AWを呈した1例に対して,集中的な回復期リハビリテーションによって身体機能,ADLが改善した。

  • 鈴木 翔太, 宇賀 大祐, 笛木 直人, 土橋 邦生
    2024 年 3 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2024/03/22
    公開日: 2024/03/22
    ジャーナル フリー

    はじめに:間質性肺炎増悪後,低酸素血症が著明であった患者に対して骨格筋電気刺激を使用し,日常生活動作が改善した症例を経験したので報告する。

    症例紹介:間質性肺炎増悪により入院となった70歳代男性,入院15日目より理学療法開始。移乗動作は軽介助で可能であったが歩行は困難であった。食事は自立,排泄は尿器,差し込み便器を使用していた。酸素6L/分吸入下の座位や起立動作で経皮的動脈血酸素飽和度が95%から89%まで低下した。そのため,高強度の運動療法が困難であったことから,低酸素血症に配慮するため,入院36日目より骨格筋電気刺激を開始した。

    結果:等尺性膝伸展筋力が4.3~6.2kgへ増大し,連続歩行距離が40mまで改善し,日常生活動作が自立し自宅退院となった。

    まとめ:間質性肺炎増悪後の患者に対する労作時低酸素血症を考慮した骨格筋電気刺激療法の併用は身体機能,日常生活動作改善の一助になると考えられた。

  • 倉田 和範, 沖 圭祐, 永田 幸生, 小野 敬史, 三宅 智宏, 乾 香織, 小林 正嗣
    2024 年 3 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 2024/03/22
    公開日: 2024/03/22
    ジャーナル フリー

    はじめに:肺癌の術前呼吸理学療法(RPT)介入の効果は多数報告されているが,多くが50~75歳を対象とした調査である。今回,高齢肺癌患者に対して非監視型の術前RPT介入を行い,効果が得られたため報告する。

    症例紹介:87歳女性の原発性肺癌の術前に,持久力・レジスタンス・呼吸トレーニングを指導し,非監視型で7週間のRPT介入を行った。7週間後に6分間歩行距離45m,short physical performance battery 1点,およびFVC 16%,FEV1 14%の改善を示した。入院後,胸腔鏡補助下にて肺切除術を施行され,術後肺合併症を認めなかった。第5病日の6分間歩行試験にて労作時低酸素血症を認めたが,在宅酸素は導入せず第6日目に自宅退院となった。

    まとめ:高齢肺癌患者に対する非監視型の術前RPT介入は運動耐容能・身体機能・肺機能を改善する可能性がある。

活動報告
  • 新貝 和也
    2024 年 3 巻 1 号 p. 82-90
    発行日: 2024/03/22
    公開日: 2024/03/22
    ジャーナル フリー

    昨今の情報やサービスのグローバル化に伴って,海外の情報を入手する手段も増え,留学に対するハードルは徐々に低くなっている。しかしながら,依然,専門職としての留学は狭き門である。われわれ理学療法士の世界においても,国際活動の活発化に向けて様々な取り組みが行われているが,実際に専門職として留学を実現した者は限定的である。筆者はカナダに位置するトロント大学理学療法学部,Dr. Darlene Reid教授の研究室に博士研究員として1年間留学する機会をいただいた。今回,理学療法士としての研究留学について,その経緯や渡航までの流れ,カナダと日本の研究・教育システムの違い,および筆者が感じた留学のメリット等を中心に,その活動を報告する。最近の留学事情について,自身の実体験を中心にお伝えすることで,現在留学を検討している理学療法士の方々の一助になればと思う。

短報
  • 永岡 直充, 今田 健
    2024 年 3 巻 1 号 p. 91-98
    発行日: 2024/03/22
    公開日: 2024/03/22
    ジャーナル フリー

    背景と目的:脳血管疾患を持つ症例の呼吸機能と日常生活動作(ADL)との関連を検討した。

    対象と方法:対象は回復期リハビリテーション病棟に入院し,2016年から7年間で筆者が担当した23例とした。ADLの指標には機能的自立度評価法(FIM),基本動作能力(ABMS-II),身体機能はTrunk Control Test,握力を評価し,呼吸機能との関連を検討した。

    結果:入院時の%努力性肺活量は退院時のFIM,ABMS-II,身体機能と有意な正の相関を示した。

    結語:脳血管疾患を持つ症例の努力性肺活量には呼吸筋力と体幹機能との関連が示唆された。呼吸筋の非呼吸性活動である体幹の姿勢制御機能が基本動作やFIMに影響し,呼吸筋力と体幹機能を反映した努力性肺活量はFIMとの間に正の相関関係を示したと考えた。呼吸筋力,体幹機能を包括した評価として呼吸機能検査を活用できると考えた。

編集後記
feedback
Top