海洋の利用開発は, 程度の差はあれ必然的に, 海洋環境の物理的, 化学的, 生物的変化をもたらす。その変化の速さ, 強さ, 規模等は, 海水の交流状況に大きく左右される。著しい人間活動の結果, 内湾はもちろん沿岸, そしてそう遠くない将来に大洋すらも姿を変えようとし, それが人類の生活生存に重要な意味をもつとき, 海洋の開発に当り, われわれは時間的・空間的にもつとスケールの大きい海水交流やその影響についても認識を深めねばならない。日本周辺のスケールの異なる三つの海域にその実例を求める。浜名湖については, 湖口改修という一つの土木事業が, 十数年にわたって海洋環境を変え, それが生産面に大きな変化を与えつつある姿を眺める。瀬戸内海については, 狭い海峡にはさまれた内海の中央部と周防灘西部は, 半ば湖水の性格をもって海水の交流が弱く, かつ各海域は密接に結びついているので, 内海の総合開発もこの点を十分考慮する必要がある。その時代の到来が口にされ始めた日本海は, 本体が非常に深く出入口が浅いため, 海水交流に問題があり, 開発に慎重を要することを逑べる。
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