スギカミキリ被害林分から選ばれた無(微)害クローンを網室で育成し, 5年生時点においてスギカミキリ成虫を放ち,各検定木に対する産卵寄生状況を調査した。併せて,その検定条件についても検討した。5m×8m方角の中央部を放虫拠点とし, 1検定木あたり0.5対にあたる20頭ずつの成虫を4拠点に投入したところ,矮小なごく一部の検定木を除く,全てのものに食入が認められた。このことから放虫地点からの遠近にかかわらず,各検定木にはほぼ均一に成虫が伝播したものと推察された。確認された食入数は♀1頭あたり推定産卵能力の1/6にあたる15頭であったが,この99%が地上高2mまでの位置に産卵したもので占められた。これら産卵寄生状況には弱い集中分布が認められ,同時に1%水準の危険率でクローン間に有意な差異が認められた。ただ,検定精度を大きく損なう程ではないにしても,一般的な傾向として,検定木の大きさ(樹幹径級)と食入数には一定の関係が存在することが示唆された。したがって,検定精度をあげるため,検定材料の育成過程では径級をできるだけ揃える配慮が望まれる。以上述べた結果は,スギカミキリ抵抗性育種事業の実施要領で規定する, 1次検定法にそって実施したものである。胸高直径2.5cm以上に達した5年生の抵抗性候補木クローンに, 1本当たりスギカミキリ成虫を♂♀0.5対の割合で,しかも40m^2エリアの中心に放虫した場合,スギカミキリ抵抗性網室検定の妥当な結果を得ることが示唆された。なお,スギカミキリ幼虫の穿入にともなう樹体の生理的な反応や蛹室の形成状況については,別途検討して報告することとしたい。
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