目的:男性の更年期障害(加齢性腺機能低下症候群:LOH症候群)は,中高年男性の身体的および精神的な健康に影響を及ぼす.しかし,日本では認知度が低く,適切な診断や治療を受けていない従業員が多いのが現状である.本研究では,日本の働く男性における更年期に関する健康課題,リテラシー,およびプレゼンティーイズム(出勤はしているが健康問題により生産性が低下している状態)について業種を考慮に入れて調査した.方法:本調査は,東京の業種の異なる企業3社に勤務する35歳以上の男性社員3,362名を対象に実施した.調査内容には,健康状態(Aging Males’ Symptoms (以下,AMS)スコアを含む),リテラシー,職場環境,仕事への影響に関する質問が含まれた.労働生産性の損失を表すプレゼンティーイズムの評価には,単一質問式プレゼンティーイズム評価尺度を用いた.調査は自己記入式WEB質問票を通じて匿名で実施した.結果:有効回答者数は1,811名で,年齢層は30代から60代以上まで幅広く分布していた.職位に関しては,1.3%が役員,31.9%が管理職,53.1%が一般社員であった.「男性更年期」という言葉の認知度は79.2%と高かったものの,その具体的な症状を理解している従業員は19.0%にとどまった.参加者のAMSスコアは,9.4%が重度,21.5%が中等度であり,全体の約3割程度が中等度以上の症状を抱えていることが判明した.仕事への影響として最も多く挙げられたのは「集中できない」で,58.8%の回答者が選択をしていた.中等症または重度の症状を持つ社員のプレゼンティーイズムは26.4%だった.さらに,症状を持つ社員のうち14.8%がプレゼンティーイズムは50%以上であると答えていた.考察と結論:本調査によって,日本企業における男性更年期の実態の一端が明らかになり,男性更年期症状が労働生産性に大きな影響を与える可能性が示唆された.
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