目的:医療機関においても産業保健活動が展開されつつある.本調査の目的は,関東地方の病院機能評価の認定基準を満たした病院(病院機能評価認定病院)における産業保健活動の現状を明らかにすることである.また,2024年度から開始された医師の働き方改革に対する準備状況を把握する.対象と方法:関東地方の病院機能評価認定病院(497病院)を対象に,各病院の産業保健担当者宛てに郵送によるアンケートを実施した.調査内容は,病床数,病院機能,産業保健体制,感染症対策,メンタルヘルス対策,長時間労働対策,医師の働き方改革に関する事項である.結果:205病院(41%)から回答を得た.産業保健体制については,一部の病院で院長・理事長クラスが産業医を兼任しており,法令上の課題が認められた.衛生委員会は98%の病院で開催されていたが,毎月開催している病院は85%にとどまった.また,職場巡視は,病床数が多い病院ほど実施率が有意に高く,全体の79%の病院で定期的に実施されていた.病床数が多いほど,産業看護職の活動が多く見られた.感染症対策では,B型肝炎や風疹・麻疹の免疫確認およびワクチン接種が広く実施されていた.また,新型コロナウイルス感染症のワクチン接種は全病院で実施されていた.メンタルヘルス対策については,産業医への相談体制が多くの病院で整備されていたが,産業医による復職面談の実施率は病床数の多い病院ほど高く,有意差が認められた.医師の働き方改革に関して,医師の時間外労働の上限規制は,原則年960時間(A水準)であるが,特例として年1860時間を上限とするB/C水準が設定された.病床数が増えるとA水準取得病院が減少し,B/C水準取得病院が増加する傾向が見られた.B/C水準取得は,主に一般病院であった.また,長時間労働医師への面接指導については,A水準取得病院と比べ,B/C水準取得病院では面接指導実施予定医師の選定が広く行われていた.結論:関東地方の病院機能評価認定病院における産業保健活動の内容として,産業医の選任,衛生委員会の開催や感染症に関する対策は病床数にかかわらず実施率が高かった.一方,職場巡視,長時間労働者への面接指導,精神疾患からの復職面談や医師の働き方改革に関わる項目などでは,病床数が多い病院ほど実施率が高い傾向が見られ,病床数による差が認められた.
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