産業衛生学雑誌
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Issue Information
原著
  • 須賀 弘篤, 北原 照代, 辻村 裕次
    原稿種別: 原著
    2025 年 67 巻 2 号 p. 35-46
    発行日: 2025/03/20
    公開日: 2025/03/25
    [早期公開] 公開日: 2025/01/11
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    目的:業種等の企業特性に応じて従業員の健康障害のリスクを評価することは,健康障害が生じている労働者集団の特定や,企業による健康施策の立案に利用できる.業種間における疾患の有病率や受療率の違いは先行研究で検討されているが,生産性を低下させる,休職を指標とした研究は乏しい.本研究の目的は,疾患別の休職率と業種などの企業特性との関連を明らかにすることである.対象と方法:労働政策研究・研修機構に申請し,アーカイブデータの二次利用許可を得て,全国の50人以上の常用雇用者を有する民間企業を対象とした調査データを取得した.メンタルヘルス,がん,糖尿病・高血圧等の生活習慣病,心疾患,脳血管疾患及び難病による休職者数を目的変数とし,負の二項回帰分析を行い,順序ロジスティック回帰で結果を確認した.業種以外の企業特性として,企業規模,年齢構成,健康診断の実施状況及び労働組合や柔軟な勤務制度の有無を調整した.結果:疾患別の休職率は,メンタルヘルスでは情報通信業,医療・福祉及び教育・学習支援業で高く,生活習慣病と心疾患では運輸・郵便業,がんでは医療・福祉においてそれぞれ高かった.労働者の年齢層が高いとメンタルヘルス関連の休職率が低い一方で,難病を除く身体疾患の休職率は高かった.労働組合の存在はメンタルヘルス,がん及び脳血管疾患の休職,柔軟な勤務制度が利用できることはメンタルヘルスと心疾患の休職と関連していた.考察と結論:メンタルヘルスによる休職率が高い3業種はいずれも専門・技術職の割合が高く,共通した背景として業務負荷の大きさが考えられる.加えて,特に教育や医療では役割の不明瞭さがストレスに繋がっている可能性がある.運輸・郵便業において,生活習慣病や心疾患による休職率が高かったのは,勤務形態や生活習慣の影響が考えられた.また,医療・福祉業でがんによる休職率が高いのは女性比率の高さが影響している可能性がある.本研究は性別などの他の研究で検討された変数を調整できなかったので,特にがんによる休職者数の結果の解釈には注意する必要がある.

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