最終公開版論文が発行・公開される前の論文をオンラインで提供しています。
本研究は,リバース・ナレッジ・フローという現象,すなわち転職によって成員を失うことを契機として元組織に知識が流入する可能性について検討する.日本の半導体発明者の転職データを分析した結果,流動性の高い米国で指摘されてきたリバース・ナレッジ・フロー現象は,流動性の低い日本においても確認できた.ただし,複数人の転職者が存在する場合には,この知識移転効果が制限される可能性が示唆された.
ビジネスモデルの逸脱的変化を巡る先行研究では,ビジネスモデルの慣性が前提に置かれることで,一時的な変化プロセスが注目され,継続的な変化プロセスは看過されてきた.この間隙を埋めるべく,支配的なビジネスモデルからの逸脱を継続的に果たした事例を対象とした経時的事例分析を行う.この分析からは,慣性をもたらすと考えられてきた要因によって逸脱的な局所変化が誘発・波及・増幅されていくダイナミクスが明らかとなる.
本稿の目的は,離職者から以前の所属組織(移動元組織)にもたらされる知の「探索」の機会を通じて,移動元組織が新たな知識を社内に取りこみ商業化に結実させるオープン・イノベーションの実現過程を解明することである.燃料電池用の電解質膜の事例分析を通じて,研究者間の関係的社会関係資本を基に,移動元組織が離職者の移動先の組織と共同研究開発を実施し,組織間で知の「探索」と「活用」の両利きを実現する論理を示した.
本稿では、不明部分の多いリーダーのダブル・ループ学習のプロセスについて 使用理論を手がかりに調査した。食品メーカーZ社で研修を通じ使用理論を形成したリーダー13名とそのフォロワーに対し、ダブル・ループ学習の傾向を識別する基準を設定し、比較ケース・スタディにより分析した。その結果、ダブル・ループ学習の傾向のあるリーダーは建設的な対話を通じて予測範囲を広げ、使用理論を改訂していることが見出された。
大学発技術の上市(製品化)を促進するプロセス要因を明らかにするために,日本の技術移転機関(TLO)における39件のプロジェクトを調査した。質的比較分析の結果によると,上市の促進のために重点化されるべき活動は特許出願前の入念なプレマーケティングと,製品開発ステージにおける境界連結活動の2点である。この発見は,科学技術の商業化に関する適合的な価値連鎖パターンが日米で異なることを示唆している。
本論文は,新事業等の企画プロジェクトの質問票調査(n=400)により,チームの創造的成果と多元的視点取得(様々なステークホルダーの立場に立って世界をイメージする視点取得の多様性)との関係を検証した。多元的視点取得は創造的成果と直接的にプラスの関係があった。チームの多様性は,チームが接触する相手の多様性を介して多元的視点取得に,接触相手の多様性は多元的視点取得を介して創造的成果に間接効果があった。
本稿は,Plowman et al. (2007) に代表される継続的変革研究が想定していない,変革の意図をもったリーダーシップが連続的創発プロセスを起動するメカニ ズムの実証を目的とする.このリーダーシップをトランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)として仮説を構築し検証した結果,このメカニズムは実証されたが,TFL のメカニズムへの関与によっては,起動を妨げうることも示唆された.
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら