新狭窄の要因としては男女差のみが有意であった.新狭窄の発生部位については, 全例固定の上位椎に狭窄性変化を生じた.一般的に腰仙椎固定を加えないいわゆるfloating fusionの場合には, 固定の下位隣接椎間関節に著明な変化と狭窄を生じるとされる[20, 23].今回の症例では, 固定に際しL4/5のみでなくL5/S1の部分にも移植骨が接するようにした例や, intercrestal lineがL4棘突起を通る例, L5横突起の大きな例などが含まれていた.これらではL5/S1椎間関節は制動的に働いていて変性性変化が起こりにくいと考えられた[11, 19].一方, 固定椎間の上位椎には過度の負荷がかかるため, 椎間関節の変化や黄色靭帯の肥厚を生じたり, 負荷に耐えきれずにヘルニアを生じたものと考えられる[14].固定術の目的は, 術後に腰椎が不安定化し, 症状が再発するのを予防することである[10, 18].しかし腰椎変性性すべり症に対して, 除圧術だけを行っても不安定化は2.7%のみであったとの報告[3]や, 後方要素を十分に除圧すると腰椎の不安定化を生じるが, 自家骨後側方固定ではすべりの防止効果はなかったとの報告など, 固定術の不要論もある[12].その一方で, 除圧術後有意にすべりが増加したとの報告もあり[8], 一般的には何らかの固定術が加えられることが多い[16].しかし経過が長期におよべば, 固定術の隣接椎間への影響は無視できず, 非責任椎間にpost fusion stenosisが発生する[14, 21, 22].固定術後, 隣接椎間に同様の変化をきたしunstable phaseとなれば, 後に隣接椎間にも固定術が必要となることも有り得る.また周辺支持組織の損傷も高度になることは避けられない.従って, 自然固定の時期にある症例では出来るだけ手術侵襲を少なくした除圧術にとどめるべきと考えられる.固定が必要と判断される場合, 固定力を重要視した内器具固定がもてはやされている昨今ではあるが, PLF in-situは, 固定術の中でも比較的侵襲が少なく今後も生き残って行く治療法であると思われる.その適応については, 除圧術のみの例や, 他の固定術などと長期観察結果を比較検討するべきであろう.
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