山口医学
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57 巻, 5 号
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レビュー
  • 菅 一能
    2008 年 57 巻 5 号 p. 127-143
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2008/12/08
    ジャーナル フリー
    ブドウ糖代謝機能診断とCTによる形態診断を同一断面上で同時に行えるF-18-2-Fluoro-2-deoxy-D-glucose (FDG) positiron emission tomography (PET) /CTスキャンは,腫瘍診断と治療戦略において必要不可欠なモダィティになりつつある.全身検索が可能な本検査は,原発腫瘍の検出/ステージング/予後予測,集約的治療における効果判定や予後予測さらに他の重複する病変をone stop shopping的に評価できる点で有用性が高い.但し,悪性腫瘍の種類によりFDGに対する親和性やブドウ糖代謝は異なり,PET/CT検査の用いられ方は一様ではなく,各腫瘍の性質に基づく使い分けも必要である.本稿では,腹部・骨盤部領域のPET/CT検査の腫瘍診断と治療戦略に必要な基礎的知識,および各種腫瘍の性質に基づいた使われ方を合計3シリーズに掲載し,自験例を基に文献的にレビューする.
ミニ・レビュー
  • 古元 礼子
    2008 年 57 巻 5 号 p. 145-152
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2008/12/08
    ジャーナル フリー
    甲状腺ホルモン (T3,T4) は発生,成長,代謝において重要な働きをしているが,その作用は甲状腺ホルモン受容体 (TR) を介して発現する.TRは核内受容体スーパーファミリーに属するリガンド依存性の転写調節因子であり,標的遺伝子の発現を調節する.ヒトのTR遺伝子の異常は甲状腺ホルモン不応症 (RTH) として報告され,αとβの2つのTR遺伝子のうち,TRβ遺伝子の欠損または変異によるホルモン作用の異常である.TRβを優位に発現する下垂体では甲状腺刺激ホルモン (TSH) に対するネガティブフィードバックが破綻する.今回,我々はRTH患者で同定されたTRβ遺伝子の変異を導入した遺伝子改変マウスを解析した.この変異TRβ (TRβPV) はリガンド結合部位のアミノ酸置換のためリガンドが結合できない.TRβPV/PVマウスは血中T3,T4,TSHの著しい上昇を示し,半年齢から下垂体が野生型の2倍以上に増大した.病理組織学的には多発性のTSH産生腫瘍を認めた.コントロールとしてTRβPV/PVマウスと同様に著しいT3,T4,TSHの上昇を示すTRα1-/-,TRβ-/-マウス(TRα1とTRβを欠損する)を解析した。TRα1-/-,TRβ-/-マウスはTSHに対するネガティブフィードバックが破綻し,下垂体からTSHを激しく産生するにもかかわらず,下垂体は正常であった.腫瘍の発生にリガンドの結合しない変異TRβが重要である可能性が示唆された.cDNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析より,TRβPV/PVマウスに発生するTSH産生腫瘍ではcdc2,cyclin D1など細胞周期,細胞増殖に関連する遺伝子の発現が上昇していた.TRβPVの機能解析により,リガンドの結合しないTRβPVを介してcyclin D1/CDK/Rb /E2F シグナルが活性化され,腫瘍の発生に関わっている可能性が示唆された.
原著
  • 藏澄 宏之, 伊東 博史, 阪田 健介, 小林 百合雄
    2008 年 57 巻 5 号 p. 153-158
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2008/12/08
    ジャーナル フリー
    【背景】近年のカテーテルインターベンションの発達に伴い,多枝病変に対する冠動脈バイパス術 (CABG) が増加しつつある.その中には同一冠動脈内に重複した狭窄病変を有するために単純なCABGでは対処しえない症例が認められる.【目的】左前下行枝 (LAD) の重複病変に対してOnlay Bypass Graftingの有用性を検討すること.【結果】2005年1月~2007年7月まで当院で施行したOff-Pump,CABG症例(131例)の内,6症例でLADの重複病変に対してOnlay Bypass Graftingを行った.年齢68.8±6.5歳,性別男:女=5:1,Bypass枝数2.1±0.9,術後最高CPK-MB 32.8±29.8IU/L,On-Pump Conversion 0%(0/6),PMI発生率 0%(0/6),Graft開存率 100%(5/5) であった.【結論】Off-pump Onlay Bypass Graftingを左前下行枝重複病変に対し行い,結果は良好であった.Onlay Bypass Graftingは左前下行枝分枝の完全血行再建を目指す,有用な治療法であると考えられた.
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