恒久的ペースメーカー植え込み術において,アクセスが容易なため鎖骨下静脈穿刺法が広く普及している.しかし,通常のこの方法は胸郭内で静脈を穿刺するため,リードが肋鎖部で
鎖骨下筋
や肋鎖靱帯,烏口鎖骨靱帯を通過し,断線や絶縁被覆損傷の原因になることが知られている.
今回我々は,鎖骨下静脈を胸郭内に入る前の第1肋骨外縁付近の肋骨上で穿刺する胸郭外鎖骨下静脈穿刺法を試みた.本法を,第1肋骨外縁の最外側より下方約1cmまでカテラン針で探査し,10分以内に穿刺できないときは造影後に再施行するという条件で検討した.
1995年5月から1996年7月までの15カ月間に連続して施行した新規恒久的ペースメーカー植え込み術37例(リード47本)で検討した.造影なしで25例(33本)に挿入し,造影後8例(9本)に挿入した.造影の結果は,高位走行4例,低位走行4例(静脈閉塞のため対側より行った1例を含む)であった.残り4例は,状態不良1例とり疼痛1例による通常の鎖骨下静脈穿刺法2例,および鎖骨下静脈狭窄による腋窩静脈穿刺法2例であった.
続発症のない動脈穿刺以外,気胸,出血,静脈内膜剥離,リード移動はなかった.
本法は,リードが自然の静脈路を経て肋鎖部を通過するためにストレスが少なく,肺や胸膜は広い第1肋骨で守られるので,急角度で第1肋骨に穿刺針を進めるという精神的障壁を克服できれば,安全かつ容易な方法である.
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