1.はじめに 当林業技術センターでは多雪地帯におけるスギ林の生産力を明らかにする目的で、富山県における主要スギ品種であるタテヤマスギ、ボカスギ、カワイダニスギ、マスヤマスギなどを対象として現存量や成長に関する調査を、1970年代後半から現在までに合計40林分で実施した。本報告では、富山県で最も植栽面積が多いタテヤマスギ林分を中心に既に報告済みの資料に未発表の資料を加えて、幹、枝および葉などの現存量および成長量と生育段階および本数密度の関係について検討を試みた。
2.調査地と方法 タテヤマスギの調査は富山県内の17箇所の林分で行った。林齢は12から96年生である。立木密度は587から5,500本/ha。調査地の標高100から1,100m。プロット内の全個体の胸高直径を測定し、樹高をサンプル調査した後、4から12本の供試木を根元から伐倒した。枝下高、当年伸長量を測定後、層厚1mとして、層別刈取りに準じた方法で、幹、枝、葉に切り分け生重量を測った。緑色部を葉に含めることとし、一部の供試木については新葉と旧葉に区別した。全供試木について層毎に、幹、枝、葉のサンプルを採り、研究室に持ち帰って80から105℃で乾燥し、含水率を求め、生重量を乾重量に換算した。樹幹解析用に各層の下部から円板を採取した。
3.結果 林分現存量:調査地毎に、部分重すなわち、幹重量、枝重量および葉重量と直径の2乗×樹高(D
2H)の相対成長式を求めた。つぎに、これらの相対成長式と胸高直径および樹高の毎木調査データから林分現存量を推定した。つぎに、各調査地においてD
2Hと幹、枝および葉などの部分重との間の相対成長係数を求め、林分の平均樹高との関係について検討した。その結果、幹の相対成長係数は常に1より小さいことから、単位面積当たりの幹重量は立木密度に対して漸増する傾向があり、収量一定の法則が成り立つことがわかった。枝の相対成長係数は生育初期を除くと常に1より大きいことから、単位面積当たりの枝重量は立木密度に対して最適密度があり、立木密度が大きいほど減少する傾向があるといえる。 葉の相対成長係数は1より大きい場合もあるものの1に近いことから、ほほ収量一定の法則が成り立つと見なしてもよいと考えられた。そこで、収量密度の逆数式が成り立つと仮定した場合には、単位面積当たりの葉重量の上限値は27ton/haと推定された。
成長量:樹幹解析を行って材積成長量を算出した結果、林齢80年生以上の高齢林における材積成長量は14から17m3/haで、高齢林であってもかなり良い成長を示した。 葉の成長量は新葉量と等しいと仮定して推定した。その結果、各調査地における新葉重量は全葉重量と比例関係にあり、葉の成長量は全葉重の約4分の1と推定された。樹冠が閉鎖した林分の葉量は25ton/haであることから、毎年、約6ton/haの葉が枯死するとともに新たに同量の葉が生産されていることになる。
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