日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: D10
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T8 森林土壌におけるガスの動態
多雪地のスギ林土壌におけるガスの動態
皆伐・間伐前後の二酸化炭素とメタンの動態
*安田 洋図子 光太郎相浦 英春高橋 由佳阪田 匡司高橋 正通
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抄録
 温室効果ガスの二酸化炭素やメタンは温暖化への影響が大きいとされており、これらのガスは森林生態系においては、林床面を介して放出されたり吸収されたりしていることが明らかになっている。一方、かって精力的に造林されたスギ、ヒノキなどの人工林は間伐や主伐期をむかえており、これらの森林伐採が温室効果ガスに及ぼす影響についての調査研究が急がれている。そこで、スギ人工林に試験地を設け、間伐および皆伐の森林施業を行うことにより森林土壌からのメタン、二酸化炭素の放出・吸収を把握することを目的として、メタンフラックスと二酸化炭素フラックスを測定した。また、地温と土壌水分を測定し、これらの土壌条件が伐採後のガスフラックスに与える影響を検討した。 試験地は富山県立山町座主坊地内で、標高:400m、斜面方位:N、第3紀の泥岩を母材とする適潤性褐色森林土からなる52年生タテヤマスギ人工林である。2002年8月に28m×28mの方形区を3区設置して試験区とした。その内の2区については10月初旬に間伐、皆伐を実施した。各試験区内の5箇所に内径400mm、高さ150mmのステンレス製円筒形チャンバーを設置し、クローズドチャンバー法によって二酸化炭素、メタンの各フラックスを測定した。チャンバー内のガスは天蓋を閉鎖後、0、10,20、40分の間隔でサンプリングを行った。試験区の設置から2週間後の2002年8月中旬より各ガスフラックスの測定を開始し、その後、11月から翌年4月までの積雪期間を除き、月に1度の間隔で測定した。ガスフラックス測定時に、深さ5cmにおける土壌の含水率を各区内の3箇所で、地温を1箇所で測定した。間伐・皆伐によって生じた地温、土壌水分環境の差、二酸化炭素フラックスおよびメタンフラックスの処理区間の差はフリードマンの検定により、また、各試験区における地温、土壌水分と二酸化炭素フラックスおよびメタンフラックスの関係は分散分析により検討した。 地温は間伐、皆伐処理により高くなる傾向がみられ、その傾向は春から夏にかけて明らかであり、対照区と皆伐区の間に5%水準で有意差が認められた。皆伐処理によって土壌水分率は高まったが、間伐区では明らかではなかった。皆伐区と対照区の間には有意差(5%水準)が認められた。 各試験区とも地温が高くなるにつれて二酸化炭素フラックス値も高くなった(図3)。処理により同程度の地温でも対照区に比べ二酸化炭素フラックス値はやや低くなり、皆伐区と対照区の間には有意差(5%水準)が認められた。メタンフラックス値は、各試験区とも地温が高くなるにつれて大きくなり、さらには間伐、皆伐処理がメタンフラックス値をより大きくし、土壌中への吸収を高めることが明らかとなった。皆伐区と対照区の間には5%水準で、また、間伐区と対照区の間には1%水準で有意差が認められた。
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© 2004 日本林学会
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