本稿の目的は、近年急速に社会的な関心の対象となりつつある「マンガ原画」のアーカイブについて、とりわけ2010年代以降の状況を報告することである。マンガ文化と社会の関係性という背景にも触れつつ、ここでは特に、文化庁によるマンガ原画アーカイブ事業における具体的な実践を紹介する。アーカイブが公的な事業として展開しているという事実は、マンガ文化に対する社会的な評価が変化してきたことを示す一方、アーカイブ作業の現場で顕在化する脆弱性や膨大さといったポピュラー文化の本質は、そうした性質とは真逆の形で定義付けられていた近代以降の「文化・芸術」概念を揺さぶり、拡大させていることもわかるだろう。
2015年10月から放送されたTVアニメ『おそ松さん』(制作:studioぴえろ)は,“社会現象化”するほどの大ヒット作に成長した.その最中,『おそ松さん』を特集した雑誌が相次いで完売・重版を果たしたのはなぜなのか.本稿では『おそ松さん』のファンが見せた作品の受容姿勢を踏まえつつ,アニメ雑誌や一般向け雑誌に掲載された特集内容の分析を行い,各雑誌に見受けられた掲載情報や戦略性の違いを明らかにして,その背景に迫った.
テレビの視聴時間は年々減少している.これに伴い,民間テレビ局は厳しい経営環境に置かれ,特に地方局は厳しい状況にある.そのような中,アニメ番組を中心に特色ある編成を行っている地方局も存在する.しかし,その内容は大人向けで放送時間も深夜帯となっているほか,制作方式にも変化が生じている.本稿ではインタビューを中心に地方局の有効な番組編成戦略はいかなるものかを,系列局と独立局2社のアニメ番組編成の事例から考察した.番組テーマの選別や編成時間の工夫,番組スキームの選択など,組織的な学習と戦略の実行により,番組視聴者を増やす可能性を示した.アニメのような特定のファン層を持つ内容の番組編成については,地域特性を見極め,環境や生活スタイルに合ったテーマを採用する.そして地域リソースを最大限に活かしつつ番組調達を行い,最適な枠に番組を編成することができれば,地方局は長期的な競争優位を獲得しうる.
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