ブナ科の大型堅果は長期貯蔵が難しく,苗木生産や遺伝資源保存の課題となっている。本研究では,液体窒素によるブナ堅果の長期貯蔵の可否を明らかにするため,シリカゲル乾燥により4段階の含水率(4.3~13.5%)に調整し,厚手ビニール袋に密閉して液体窒素による超低温で20年間貯蔵した。その結果,貯蔵前後で含水率の有意な変化は認めらなかった。4段階の含水率に調整した堅果は,20年貯蔵後に2.0~26.0%が発芽したが,含水率調整前の76.0%に比べて有意に低下した。また,発芽から5カ月後の実生高および根元直径は,発芽試験前年に採取した堅果由来の実生と有意差がなかった。これらの結果は,ブナ堅果の液体窒素を用いた長期貯蔵の有効性を示すものであり,ブナの遺伝資源保存への活用が期待される。
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