【目的】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」の茨城県の調査地域である県内4地域において昭和30~40年代に主菜として食されていた中で特徴的なもの8品を報告する。
【方法】県内4地域(県北、県央、県南、鹿行)において平成24~26年度に聞き書き調査を実施した。その調査からわかった地域ごとの主菜の特徴について検討した。
【結果】県北の海に面した2地域には、当時水揚げ量の多かった魚を利用した特徴的な料理がある。北茨城市平潟地区では、あんこうと冬野菜で作る「あんこうの
どぶ汁
」が食べられている。また、ひたちなか市那珂湊地区では、たたいたさんまにねぎと味噌を入れて直火で焼いた「パイタ焼き」が作られている。
県央地区の茨城町では、冠婚葬祭の際に「つと豆腐」を食べていた。藁づとを用いて作るため、現在ではあまり作られなくなっている。また、涸沼の周辺の茨城町、鉾田市、では、「ぼらの洗い」が食べられている。湯洗いをするという独特の製法で身の臭みを抜いて調理をする。
県南地域では、霞ケ浦・北浦の恵みを受けた食文化となっている。まず漁魚が盛んであり、獲れたわかさぎや川えび等を使った「佃煮」や「釜揚げ」が食べられている。そして、霞ケ浦周辺の低湿地帯ではれんこんが栽培され、すりおろして醤油や砂糖で味付けをする「れんこんの蒲焼き」が食べられている。
鹿行地域では、大量に採れた背黒イワシを塩漬けにし、大根と漬けた「ごさい漬け」が年末から正月のご馳走であった。また、霞ヶ浦・北浦の湖岸地域でとれる鯉は、現在も「鯉の唐揚げ」にされて食べ継がれている。それは、鯉の小骨を巧みに切って骨ごと食べる見事な技も伝えている。
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