イスラエル
のイズ
リル谷で進行中の塩類集積の軽減を鑑み,より望ましい灌漑農業形態の選択を可能とするよう,定性的・定量的検討を行った。定性的検討により,他よりは優れ,相互間では優劣関係の不明な灌漑戦略を3通り立案した。それぞれ,1)各年における純便益を最大化する短期的便益最大化ストラテジー,2)長期的に地下水面の高さを保全しウォーターロギングを防こうとする地下水量保全ストラテジー,3)各年における作物の収穫量を最大化する短期的収量最大化ストラテジー,である。各ストラテジーを実施することによって得られる,非貨幣換算量までをも含む将来にわたる純便益を,採用したシミュレーションモデルによって定量評価し,それらの比較を行った。純便益は,具体的には貨幣換算量である将来純便益の現在価値と,非貨幣換算量である根圏域以下への累積塩分量に分けて評価した。各ストラテジーを灌漑水量の操作により定量化し,以上により費用効果分析を行った。結果として,異なる評価期間における将来純便益の現在価値と根圏域以下への累積塩分量,それぞれについての各ストラテジーの定量的関係が明らかにされた。更に,異なる評価期間,割引率,自然排水量に応じた様々な場合の各ストラテジーの優越関係も明らかにされた。貨幣換算量のみについては,短期的便益の追求が長期的にも最善となる一方で,貨幣換算されない累積塩分量のみについては地下水量保全ストラテジーが最善となった。総合的判断は意志決定者が下せるよう,排水施設導入の必要となる自然排水量と評価期間の組み合わせ,貨幣換算量,非貨幣換算量間のトレードオフ関係,各操作変数の異なる値ごとの各ストラテジーの優劣関係を定量的に提示した。
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