近年,加水分解コムギ含有石鹸によるコムギアレルギーの事例を発端とし,化粧品や日用品に含まれる成分(抗原)により経皮ないしは経粘膜感作し,また職業性に繰り返し暴露されることにより感作を生じ,その後に重篤な食物アレルギーを発症した事例が注目されている.
原因抗原としては,加水分解コムギ,大豆,コチニール色素などが挙げられる.また,ゴム手袋に起因するラテックス-フルーツ症候群はこのような発症機序による経皮感作食物アレルギーの先駆けと言える.加水分解コムギ含有石鹸によるコムギアレルギーの事例では,石鹸使用時の症状がなかった症例が約3割いたこと,石鹸使用をやめることでコムギアレルギーが寛解した例が多かったことなどが明らかとなった.そして,皮膚や粘膜感作による食物アレルギーでは,“食物アレルギー”の面だけをみていては原因を確定すること,適切な生活指導を行うことができないことが分かってきた.
花粉-食物アレルギー症候群もそうであるが,最も重い症状を引き起こした原因と,その感作源が異なる場合は多いのかもしれない.我々は,化粧品や日用品によって,またそれ以外にも日常的に接触する何かによって,気づかないうちに重篤な食物アレルギーを発症しうることを認識した上で診療にあたりたい.
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