現代社会における「つながり」語りは、人と人との関係(仲間)だけではなく、家庭や学校等の自分が置かれている状況(空間)のつながり、出来事の連続性という時間のつながりにおいてみられる。そこで本稿では、これらの「つながり」を、遊びを地図として読み解いてみる。
遊び空間における「つながり」語りは、価値の一元化を相対化し、その多様性を認識することへと導く。遊び空間を多元的現実として捉え、遊びの価値を認識する。その価値の認識過程では、それぞれの現実の価値のせめぎあいがあるが、それゆえにそれぞれの価値が明確になり、さらに新たな価値を生むことによって、終局的には価値の多様性を認識することでつながる空間が創造されるようになる。
遊び時間における「つながり」語りは、近代時間を相対化する。時間的な制限を受けない遊びは、時間に縛られている現代人を浮かび上がらせる。さらに、一瞬にして過去に戻ってしまう遊びは、「不可逆性としての時間」を超えて、「可逆性としての時間」の意味をわれわれに問いかけてくる。そして、偶然と不確定性に支配される遊びは、過去・現在・未来という直線的な時間の「つながり」を溶解させる。
遊び仲間における「つながり」語りは、現代社会の組織の在り方を相対化する。遊び集団では、成員のつながりを維持するために、役割やルールを変更するが、現代社会では組織の維持が優先される。また、遊びに参加する全員が当事者意識をもって意思決定することは、現代社会における上意下達の意思決定に疑問を呈する。さらに、遊びにおける贈与の行為が共同体を構築することは、現代社会における贈与による組織の在り方を考える契機となる。
遊びにおける「つながり」を丹念に読み解き、現代社会における「つながり」を相対化することで、本来子どもに備わっている「つながり(社会性)」を取り戻すことができると考えている。
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