本研究は,知的障害と精神障害の重複障害のある,31歳の男性Kと私との創作活動をフィールドにした,「表現すること」にある本質についての継続研究の一部である。Kと私という二人のあいだの相互作用的な関係性に着目し,生きづらさを抱えた一人の人と,そこに共にいることを試みた一人の人との相互行為の中でどのように芸術表現が立ち上がっていくのか,そのプロセスについて詳細に記述した。特に本稿では,一般的には問題行動とされるKの突発的な行動と芸術表現が共に起こる場で,表現者と共にいる私自身がどのようなことを経験し,どのようにつくりかえられたのかを明らかにした。
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