圃場でヤエナリを, また定温定照度下でタバコを栽培して個々の葉の生長経過を追跡した.実測された個々の葉の乾量増加は光合成の値を使って算出された乾量の増加とは一致しない (図1-b).すなわち若葉は老葉の光合成生産物の一部をとって自己の生産以上に生長する. そこで全光合成生産物が一つの植物のすべての伸長葉の間に分配された割合を調べてみた. その結果葉位により個々の葉の最終の大きさには非常に大きな差があるにもかかわらず, この分配率の時間的変化は各葉位の葉の間で大差なく確率曲線の形に類似した推移をする (図2, 5a, b,). ただ出葉速度が大きくなれば分配率の最大が小さくなり, 出 葉速度が小さくなればそれが大きくなる. この現象はつぎのような仮説によって説明できる. すなわちおのおのの伸長葉には光合成生産物質を吸引する力があって, これがどの葉でも原基の生長開始とともに一定の時間的変化をたどり, 分配率の変化は各伸長葉間の物質吸引力の比によ
りきまる
. したがって個々の葉の最終の葉面積は葉の伸長時におけるつぎの3つの量によ
りきまる
ことになる. 1) 全物質生産力, 2) その生産物中全葉の生長量となる割合(ε). 3出葉の時間的間隔 (plastochrone). この中1と2で全葉の生長量がきまり, 3によって個々の葉の生長量がきまる. 群落状態の植物について, 前報15) における葉面積指数一日物質生産量の関係と, 葉乾量対葉面積比 (leaf dry matter index-δ) とを用いれば,一日当たりの全葉の生長量の変化が8図のように計算できる. 次に (1), (2) 式を用いて任意の葉位における任意の時間の葉の量を計算した結果 (図9), 実測された葉位と葉乾量の関係を示す1-a図と同じ性質のものがえられた.
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