がん末期における患者は,その疾病に起因する苦痛のみならず死に関する心配や恐怖の葛藤により,極めて不安定な状態となる。
吾々は如何にして安楽な死を迎えさせるがについて,重要な看護視点を解明してきた。その一貫として,千葉県がんセンターに昭52年4月~54年8月の間の死亡者43例を対象として老人における問題点を検討した。
その結果,死を自覚する者の割合は高く,71~73%を占める。しかし60才以上と60才に若干満たない者の群を比較した場合,老人層では生きる意欲と不安との葛藤に陥入ることは少く,むしろ安楽な死を受けいれようとする傾向がみられる。そして安楽な死への障害となる原因要素は身体的な苦痛と,それに伴う不安と老人の孤独感が考えられる。そしてこの身体的苦痛は,その苦痛による不安とか悪循環により増強する傾向といえる。そして一方では,老人層では,遠慮と諦めから,その苦痛や不安を看護婦に向って表出する傾向が少いことが明かとなった。
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