東日本大震災により商業分野においても多くの事業者が生業を継続できなくなった中、被災自治体では、復興計画のもと事業者の再建支援が行われてきた。震災から7年経過時点で、それら各支援事業もおおむね終了しているが、再建が難航している事業者も存在する。本研究は、宮城県で仙台市に次いで人口が多く、震災で甚大な被害を受けた石巻市を対象として、被災事業者、また、新たな事業者の動向を、津波被害の程度や業種にも着目して調査し調査することで、今後の震災後の復興政策に知見を得ることを目的とする。結論として、津波被害を受けた店舗の災後動向としては廃業が最も多く、浸水深と店舗廃業率の間に相関関係が見られた。一方で、新規出店には浸水被害との相関関係は見られず、津波被災地において新規店舗は重要な役割を担っていることが明らかになった。しかし、仮設商店街や補助金事業などの再建支援は対象事業者が限定的であるという課題も生じている。これより、石巻市では、まずは再建へのサポートと、それに加えて中心市街地への新規店舗や移転店舗の集積という二重の対策を行うことにより、「商業復興」と「コンパクトなまちづくり」を実現できると考える。
抄録全体を表示