近年、宗教心の消費者倫理への影響に関する研究では宗教心、消費者倫理それぞれの概念が拡張している。宗教心では、信心の質的側面に関する宗教的態度に加え、人生の意味や目的を自己完結的に見いだす態度としてのスピリチュアリティが注目を集めている。消費者倫理は反社会的行動を思いとどまる心的基準だけでなく、リサイクル行動に代表される向社会的行動の基準をも内包するようになった。そして、両者の概念が拡張するにつれ、実証研究から導かれる成果の全容が掴みづらくなっている。
そこで新たな構造仮説の提案を目的に、宗教的態度が消費者倫理に与える影響に関する実証論文23本をレビューした。その結果、①宗教的態度を操作化した概念として多くの研究で宗教的関与が用いられており、その中でも内発的宗教性が与える影響に特に再現性が認められること、②宗教的態度が消費者倫理に与える影響については、内発的宗教性とスピリチュアリティの間に等価性が認められることを明らかにした。これらの示唆に基づき構造仮説を提案する。
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