家庭洗濯による環境への負荷を軽減する方策の一つとして, 衣類のまとめ洗いが考えられる.代表的な被洗物として肌着を想定し, 皮脂汚れの付着した衣類を洗濯までの問保管するときの湿度が, 汚れの酸化的変質や洗浄性にどのような影響を及ぼすかについて調べた.皮脂汚れのモデルとして, 従来に引き続いて, 精製ラードを選び, 汚染布を作製した.試験布には, 綿 (Co) 布とポリエステル (Pe) 布を精製して用いた.汚染布を, 温度40℃, 相対湿度90%および50% に調整した恒温恒湿器中で, 所定の時間
エイジング
した後, 抽出して得られた試料について, その自動酸化の指標として, 過酸化物価 (PV) とカルボニル価 (CV) を測定した.また, 洗浄試験を行い, 汚染布に残留したラードをガスクロマトグラフィーで定量することによって, 汚れの除去率を求めた.
エイジング
時の湿度条件と試験布の違いによるラードの自動酸化ならびに洗浄性の相違について検討した.
その結果を要約すると, 次のようになる.
(1) 試験布上のラードのPVおよびCVは,
エイジング開始直後からエイジング
日数とともに上昇を始め, その速度はPe布の方が速かった.Co布上のラードは, 50%RHに比べて90%RHの方がPV・CV の上昇が速く, 酸化を受けやすかった.しかし, Pe布では, 湿度条件の違いによる明らかな相違は認められなかった.
(2)
エイジング
時の湿度が汚染布上のラードの洗浄性に及ぼす影響について検討した結果, Co布上のラードは
エイジング
日数の増加とともに汚れ除去率が急速に低下し, 90%RHでは5日目, 50%RHでは 20日目になるとほとんど除去されなくなった.一方, Pe布上のラードは,
エイジング
前の除去率がすでに極めて低く,
エイジング
20~30日目になってわずかに向上した.しかし, 湿度の影響はほとんど認められなかった.
抄録全体を表示