本報はゴボウに見出される1種のclosterovirus,ゴボウ黄化ウイルス(burdock yellows virus, BdYV,以前‘Bd-F’と仮称していたもの)の性状の記載ならびにBdYVを含む4種のclosterovirusの血清反応試験について述べたものである。
BdYVはゴボウでほとんど無病徴か,下葉の葉縁部にわずかに黄化病徴をあらわすほか,
エゾギク
,サンシキカミツレおよび
Nicotiana clevelandiiに全身感染した。BdYVはゴボウヒゲナガアブラムシ(
Dactynotus gobonis)で半永続的に伝搬され,
N. clevelandiiだけに汁液接種で移すことができた。粗汁液中での不活化温度は45~50C (10分),保存限度は1~2日(20C)であった。
N. clevelandii病葉から得たBdYV純化標品のUV吸収曲線は245nmに極小, 260nmに極大値があり, A260/280=1,73であった。ウイルス粒子は屈曲した長いひも状で1700~1750×12nm,構造らせんのピッチは約3.6nmであった。感染植物超薄切片でウイルス粒子は節部細胞に局在してみられ,しばしば束状の大きな粒子集塊として認められた。また,これらの細胞内には特徴的な小胞構造体がみられ,篩部細胞のえ死も認められた。
BdYV,カーネーションえそ斑(CNFV), カンキツトリステザ(CTV)およびコムギ黄葉(WYLV)の4種のclosterovirusにつきSDS-寒天二重拡散法を行ったところ,それぞれ同種のウイルス-抗血清の組合せで血清反応があらわれたが,寒天中のSDS濃度はBdYVで0.5%, 他の3種のウイルスでは0.1%の場合にもっとも明瞭であった。ミクロプレシピチンテストにより4種closterovirus相互の血清関係を調べたところ, CNFVとWLYVとの間に血清学的類縁のあることが確かめられた。
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