以上の研究結果を要約すると次のようになる.
(1)キャプスタソ軸の曲がりによって発生するワウフラッタは,振れ1μmに対して0.033%となる.よって現在の振れの公差3μm以下という規格を再検討する必要がある.
(2)真円度について考えると,ひずみ円の形状は奇数形で且つ多角形のものほど,ワウフラッタは小さく表示される.またキャプスタン軸の真円度公差0.5μmは普及型の
カセットテープ
レコーダ(ワウフラッタ0.3%程度)では十分な値であり,今後性能に見合った公差を設定すべきである.
(3)ベルトの性能を迅速に且つ簡単に測定することが可能となり,このことによって
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レコーダに組み込む前にベルトの性能を確認できるようになった.
これらの研究成果は各種の講習会や,企業へ出向いての技術指導等で普及に努めた.一方,真円度測定の依頼件数は極端に減少し,しかも依頼の目的が不良対策から品質管理的な傾向が強くなり,例えばキャプスタン軸の購入先を変更したために真円度値の確認をする程度となった.このことは各社が生産している
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レコーダを持ち込んでワウフラッタ信号を周波数分析することにより,ワウフラッタの発生源がキャプスタン軸の真円度以外にあることが明らかとなったためである.
さらに周波数分析結果から新たな部品管理も必要となった.ベルトがよい例で,今まで無検査で受け入れていたものを当試験場で試作した測定機によって性能を把握することができ,受入検査を検討するようになった.このようにキャプスタン軸の真円度がワウフラッタに影響すると始まった研究も,つきつめてみれば0.5μm以下に加工されている現在では,その影響はわずかなものであり,新たに他の部品から発生していることが明らかとなり,性能向上のための対策を企業が率先してとり入れたことは研究の大きな成果と考えてよい.
一方,試験場の性格上研究成果の適用はテープレコーダのみにとどまらず,これに関連した様々な問題が持ち込まれている.例えば8ミリ映写機のワウフラッタ対策については,研究成果を十分に活用できる内容である.
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