林道路面の良否は一般に, (1) 路面上のデ
コボコ
の多少, (2) 車輌の乗心地の良否などを基にした直感判断で行なわれることが多い。したがって,林道のごとき悪路については,その良否にある基準を与える研究も,またその方法も現在確立されていない。筆者はこうした現状において,林道路面に対する研究の必要性とともに,まず路面の良否に(悪路の程度に)科学的な根拠を与えていくことの重要性を考え,林道路面の良否判定法の研究に着手した。これに対する具体的な方法および判定法の尺度として考えられる振動加速度の測定条件との関係について,これら一連の研究は Report No.1
2)-8
9)で,すでに発表を重ねてきた。
本論文は以下にのベるように,筆者の目的とする研究に実験的な根拠を与えるものとしてとりまとめたものであり,つぎの2つの仮定を出発点としている。すなわち,
1) われわれがトラックで林道を走行する場合,しばしば大きな振動を感じるが,同じ車輌でも舗装路面上ではきわめて振動が小さく,乗心地もまたよい。この相違は,両者の路面の質の相違によるものであると考えられる。換言すれば,路面の質(形状,状態)と車輌の振動には密接な関係がありそうである。
2) デ
コボコ
路面を走行する場合,振動に基因する衝撃荷重の大きさは路面の良否(とくにデ
コボコ
の大きさ)に関係がありそうである。このことは理論的に導きうる。
以上の仮定にたって,筆者は,路面上のデ
コボコ
の大きさ(サイズの大きさ)および路面の各種の状態 (Tables 1~3) と振動加速度(衝撃荷重)との関係を実験をもとにして考察し,つぎの結果をうることができた。
(1) 車輌の片車輪が路面上の1箇の穴を乗越えるとき,および左右両車輪が同時に2箇の穴を通過するとき,軍輌に生ずる上下方向の振動加速度(g
v)は路面上の穴の大きさ,とくに穴の深さに比例して増大する (Table 1)。
(2) 車輌が路面上のいくつかの穴を連続して乗越えるとき(前後の穴から影響をうけるとき),単一の穴を乗越えるときよりも g
v の値は相対的に大きくなる。
(3) 同一路面でも,デ
コボコ
の補修前と補修後(例えば凹部に土砂を入れる)では振動加速度値に大きな相違が生ずる (Table 3, 後者が小さくなる)。
(4) ヌカルミ林道では,車輌通過により轍,穴を生じやすく,そのデ
コボコ
による振動が非常に大きくなる。これは (1) と共通。
(5) 砕石のある路面では,砕石の大小が大いに関係を有し,木橋上轍部に板張を施した板張路、面上での振動加速度はきわめて小さくなり,舗装的効果を期待できる (Table 3)。
以上の結果から,筆者は上記の2つの仮定が実験的に立証されることを示し,さらに,振動加速度を尺度として路面の良否を決めうること(ここでは路面の良否をつぎのように解する:車輌に対して大きな振動,衝撃荷重を生ぜしめる路上ほど悪路という評価をする,もちろん測定条件は一定)および,さきに述べた路面の良否に対する直感的判断に1つの科学的な根拠を与えうることを述ベた。なお第5章では,振動加速度の測定にさいして,車輌の運転者,路線勾配などをいかに取扱うべきかについて論議し,これをつけ加えた。
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