1) グリコヘモグロビンの標準化に関する委員会はHbA1c測定値の標準化, 正常値及び糖尿病患者にとって達成すべき目標値の設定, などを目的に活動することとした.そのための基礎資料としてHbA
1c測定値の施設間差の実態調査を行った.その集計結果をまとめ, 中間報告として報告する.
2) 日本糖尿病学会評議員が勤務し, HPLC法にてHbA
1cを測定している施設およびいわゆる大手検査所など計109施設を調査対象とした.これら対象施設に低, 高濃度の凍結乾燥血液検体 (国際試薬社製) 各1本および健常者, 糖尿病患者より得た新鮮血検体各1本を氷冷状態で送付し, 各施設が日常行っている方法で測定を依頼した、その際, 測定機器の機種, 不安定HbA
1c分画除去の有無測定値の補正の有無, さらに当該施設で使用している正常値についても調査し測定結果と共に回答を求めた.それらにつき107施設より回答を受け, 以下のような分析結果を得た.
3) 全体評価: 凍結乾燥血液検体 (以下凍乾品と略), 健常者血液検体 (以下Nと略) および糖尿病患者血液検体 (以下DMと略) それぞれの平均値 (M), 最大値 (max), 最小値 (min) および変動係数 (CV) は以下の如くであった (単位はいずれも%).
凍乾品1;M5.0, max6.2, min4.3, CV6.3, 凍乾品2;M10.0, max11.6, min8.6, CV4.2, N;
M5.4, max6.8, min3.7, CV10.4, DM;M10.9, max13.4, min7.7, CV10.5.また, 測定値の度数分布は凍乾品の場合一峰性であったが, N, DMの場合は共に二蜂性となった.
4) 測定機種別評価: 京都第一科学社製 (KDと略), 東ソー社製 (Tと略) 測定機器使川施設数はそれぞれ54, 51であった.各検体の機種別平均値は以下の如くであった (単位はいずれも%).凍乾品1;KD4.9, T5.2, 凍乾品2;KD10.1, T10.0, N;KD5.1, T5.8, DM;KD10.6, T11.3.
5) 不安定HbA
1c分画除去, 未除去別評価: 除去53施設, 未除去54施設であった.不安定HbA
1c分画除去, 未除去別M, max, min, CVは以下の如くであった (単位はいずれも%).
除去群: 凍乾品1;M4.9, max5.5, min4.3, CV6.1, 凍乾品2;M10.0, max10.7, min8.6, CV 4.4, N;M5.0, max5.7, min37, CV8.0, DM;M9.9, max10.9, min7.7, CV5.4.
未除去群: 凍乾品1;M5.1, max6.2, min4.6, CV6.0, 凍乾品2;M10.1, max11.6, min8.8, CV 3.9, N;M5.8, max6.6, min4.8, CV6.5, DM;M11.9, max13.4, min8.9, CV52.
6) 凍乾品測定値の平均値をみかけ上の標準表示値とし, N, DM測定値を補正して再集計: 凍乾品1, 2の測定値の平均値を標準表示値と仮定し, その値と各施設の凍乾品の実測値から補正係数を算出した.この係数で各施設のN, DMの実測値を補正, その補正測定値を再集計した.その結果は, 除去群, 補正後のN;M5.1, max6.3, min3.8, CV7.3, DM;M9.9, max12.8, min7.6, CV6.7, 未除去群補正後のN;M5.7, max6.2, min5.0, CV3.7, DM;M11.9, max12.9, min10.1, CV42 (単位はいずれも%) となった.
7) 各施設の正常値: 各施設が使用している正常値は上限値, 下限値とも実測値の施設問差の大きさと同程度の差異を示した.
HbA1c測定値の施設間差の大きいことのひとつの要因として, 不安定HbA
1c分画除去, 未除去施設の混在, 測定機種により測定されるHbA
1c分画の特異性の相違などが考えられる.前者の要因に対しては安定分画のみの測定に統一すること, 後者に対しては標準表示値で補正すること, などにより施設間差是正の可能性があると結論した.
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