ミズキ(
Cornus controversa Hemsl. ex Prain =
Swida controversa (Hemsl. ex Prain) Soja´k)に寄生する
Aplopsora corni Y. Ono & Y. Harada は,1991年に北海道静内町で採集された標本に認められた夏胞子・冬胞子世代をもとに記載・命名された.本菌は正基準標本だけしか知られていなかったが,これまでのチャコニア科サビキンの生活環研究から,本菌は異種寄生性生活環を持つことが予想された.そのため,日本各地で発生生態を調査するとともに,精子器・さび胞子世代である可能性のある
Aecidiumサビキンを収集し接種試験を行った.その結果,本菌はアズマイチゲ(
Anemone raddeana Regel)に異種寄生することが明らかとなった.これまでに,アズマイチゲに精子器・さび胞子世代を形成するサビキンの報告はなかった.また本菌は,北海道では静内町のほか札幌市および森町,および埼玉県両神村,栃木県栗山村で発生が確認された.このことは,本菌が広く日本列島に分布している可能性を示唆するものである.本菌の夏胞子・冬胞子世代宿主の範囲を調べるために,ハナミズキ(
Cornus florida L. =
Swida florida (L.) Spach),ヤマボオシ(
Cornus japonica Sieb. & Zucc. =
Benthamidia japonica (Sieb. & Zucc.) H. Hara)およびサンシュ(
Cornus officinalis Sieb. & Zucc.)にサビ胞子接種と夏胞子接種を行ったが,いずれも感染が認められなかった.
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