本研究は, 二重環縫ミシン (
ステッチ
形式: 401) 縫製における動的な縫糸張力が, 縫糸消費長やシームの基本的特性として重要な伸長性などとどのような関係にあるかを実験, 検討したものである.得られた結果は次のようである.
(1) 針糸およびルーパ糸の動的張力チャートは, 各々3箇所の角度に特徴的な張力ピークが発生した.両縫糸張力は相互に影響し合いその大きさが変化するが, 特にルーパ糸張力は針糸張力の影響を大きく受ける傾向にあった.
(2) この
ステッチ
形式では張力設定により複数の形態を取るが,
ステッチ
形態は針糸張力により主に決定され, 針糸の引き締めに関連の深い動的針糸張力の2つのピークを変数とした判別関数により, 均衡した
ステッチとそれ以外のステッチ
に判別が可能であった.
(3) 縫糸消費長と動的縫糸張力の関係は, MLn-Lnを目的変数とし, 針糸とルーパ糸張力の3つのピークを変数とした重回帰式により良好な関係を得ることができた.また, MLn-LnとML1-L1の間にも負の高い相関関係が得られた.ここでMLn, ML1は, 針糸とルーパ糸の縫糸張力のバランスがとれ, しかも縫糸や布にたるみやひずみが生じていない
ステッチ
モデルの1
ステッチ
に要する針糸とルーパ糸の消費長であり, Ln, L1はそれぞれの実際値である.
(4) シームの破断伸長率と単位長さ当りの総縫糸消費長の間に高い相関関係が得られた.
(5) 上記の関係を用い, 任意に縫製条件を設定し, 実測した縫糸張力ピークより
ステッチ
の形態, 縫糸消費長およびシームの伸長率の推定を試みたところ, 実測値を良好に推定することができた.
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