【緒言】
スポーツの発展に伴い,日本においても天然芝や土質の
スポーツフィールドから人工芝のスポーツフィールド
へと変化しつつある.一方,現代においては,海洋マイクロプラスチックが世界的な環境問題の一つとなっている.人工芝フィールドで使用するゴムチップは,環境中に放出された場合,マイクロプラスチックと見なされる.筆者らの先行研究では,東京にあるA大学の人工芝フィールドのゴムチップは,環境中に放出されていることが報告されている.また,雑食性のモデル魚であるキンギョ(
Carassius auratus)が,人工芝由来のゴムチップを積極的に摂取していることを実験により実証している.そこで本研究では,肉食性モデル魚であるニジマス(
Oncorhynchus mykiss)が,東京都内の2つの大学の人工芝フィールドから採取したゴムチップを摂取するかどうかを実験し,肉食魚への影響性の検討を行った.
【方法】
都内のA大学およびB大学から採取した人工芝由来のゴムチップおよび魚の餌(対照群用)をニジマスに与えた.投与60分後に魚体を解剖し,消化管内のゴムチップの有無およびゴムチップ数を計測した.
【結果】
ニジマスの消化管内にはゴムチップが確認されたが,対照魚にはゴムチップはなかった.
【考察】
本研究の結果,雑食性魚類に加えて肉食性魚類が,
スポーツフィールド
のゴムチップを摂取することが明らかとなった.これらの結果から,様々な摂餌パターンをもつ野生魚が,水環境中に放出されたゴムチップを摂取する可能性,およびを魚類の健康に悪影響を及ぼす可能性が示唆された.これらのことから人工芝の
スポーツフィールド
が,生態系に与える悪影響を防止するための対策について考察する必要がある.
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