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クエリ検索: "スマイルあおぞらバス"
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  • ひたちなか市の公共交通施策
    *鈴木 隆之
    日本地理学会発表要旨集
    2014年 2014s 巻 S0802
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    会議録・要旨集 フリー
     Ⅰ.はじめに
     地方都市の公共交通施策に最も影響を与えたのが,2002年2月の道路運送法改正による規制緩和である.既にモータリゼーションの進展で赤字化していた地方のバス路線に対し,多くの地方都市は赤字補てん等を行い,路線維持に努めたが,利用者の減少はさらに進み,減便や廃止が続いた.本市でも,不採算路線の整理統合や廃止が加速するものと考え,2002年度から関係各課により構成された「公共交通問題研究会」を立ち上げ,市民3,000人を対象にバス利用の意識調査を実施するなど,バス路線の現状把握や対応について研究した.その結果,公共交通を維持するためには路線バスのシステム充実が有効であると結論付けられた.
     本市内での唯一のバス事業者である茨城交通㈱も,2002年以降路線の廃止を進めたため,廃線,減便の対象となった地域からバス路線の維持を望む声が上がった.さらに,進展する高齢化で,交通弱者が増えると予想される状況となったため,民間では採算の取れない公共交通を維持・確保する手段として,コミュニティバスを導入することになった.

     Ⅱ.
    スマイルあおぞらバス

     2006年度に運行を開始したコミュニティバスは,公募により「
    スマイルあおぞらバス
    」と名付けられ,旧勝田地区,旧那珂湊地区のそれぞれ1路線で運行を開始した.路線を設定するにあたっては,自治会の協力によるアンケートの実施や,地域ごとに説明会を開催するなど,地域の意見を反映するよう努め,循環型路線,運賃は100円でスタートした.2007年には5路線,2008年には各路線双方向運行となった.また,2009年度から2011年度まで,国の「地域公共交通活性化・再生総合事業」(2013年度は,「地域公共交通確保・維持事業」)の補助を受け,乗合タクシーの実証運行等を行い,2012年12月,市北部にワゴン車による路線を追加するとともに,既存路線についても大幅な見直しを実施した.可住地が広い本市は,路線設定が難しいが,どのようにすれば効果的な路線になるか,試行錯誤を重ねながら,多くの市民にとって利用しやすい
    スマイルあおぞらバス
    を目指したいと考えている.

     Ⅲ.ひたちなか海浜鉄道
     旧茨城交通湊線も,乗客の減少により存続の危機に直面した.規制緩和により,鉄道事業も撤退が事前届出制に変更されたことから,茨城交通は2008年3月末の路線廃止を申し出た.本市では,「湊鉄道対策協議会」を設立し,県,市,地域が一体となって存続に向けた検討を重ね,2004年3月に第3セクター「ひたちなか海浜鉄道湊線」が誕生した.
     存続できた理由の一つに,地域の湊線に対する思い入れがある.存続の原動力となったのは,「おらが湊鐵道応援団」である.廃線の申し出直後から利用促進に取り組むとともに,存続に向けた署名活動も行われた.現在も,商店街と協同して,海浜鉄道利用者に対する特典サービスの実施や広報紙発行などの活動に取り組んでおり,海浜鉄道の重要なパートナーとなっている.
     もう一つの理由は,この鉄道が市内で完結していたことも大きな要因である.複数の市町村に跨がる場合,存続に対する市町村の意識の差で廃線となったものも多い.しかし本市では,市長が地域の思いを受け止め,存続させることを決断した.市長自らが先頭に立ち,事業者や銀行と交渉を重ね,市民の日常の重要な交通手段としての必要性を訴えたのである.
     海浜鉄道は,2008年度から2012年度まで「湊鉄道線再生計画」に基づき,鉄道施設の改修,利用促進に取り組んできた.2013年度からの「第二期湊線基本計画」では,安定的な利用者増を図るため,新駅の設置や鉄道延伸の調査を行うなど,廃線間近であったとは考えられない状況となっている.

     Ⅳ.ひたちなか市の公共交通施策
     本市では,2008年年3月に公共交通活性化協議会を立ち上げ,「市民の誰もが気軽に利用できる公共交通体系づくり」を目標とし,
    スマイルあおぞらバス
    を中心としたネットワークづくりやひたちなか海浜鉄道の安全確保を基本とした「ひたちなか市地域公共交通総合連携計画」を2009年3月に策定した.現在ひたちなか市の高齢化率は22.2%(2013年9月末現在)で,今後も上昇することが見込まれ,交通弱者や買い物弱者が増えると考えられる.他方,人口の増加は頭打ちであり,公共交通利用者の大幅な増加は見込めない.このような状況から不採算路線が今後も増えていくことが予想され,行政が公共交通を支える必要性がますます高まると考えられる.
    2013年8月に実施した市民意識調査によれば,市民の54%が公共交通への行政の支援を現状程度,もしくはより充実させるべきと回答している.これは,行政が公共交通を維持・確保していくことについて,市民の理解が得られていることを示しており,今後さらに積極的に公共交通の充実を図っていきたい.
  • *土`谷 敏治
    日本地理学会発表要旨集
    2015年 2015a 巻 202
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    Ⅰ.はじめに
      第三セクターひたちなか海浜鉄道は,設立に当たってひたちなか市が湊線の存続や公共交通の必要性について,市民に対して積極的な広報活動を行った結果,同線の存続と行政による財政援助について,市民全体の支持がえらた.設立後同社は積極的な営業施策を実施し,利用者数を順調に伸ばしてきたが,東日本大震災によって,約4か月半にわたる運休を余儀なくされた.しかし,ひたちなか市の援助のもとに,早期の鉄道復旧決断とその表明によって,運休による利用者の逸走を最低限に抑え,復旧後は順調に利用者を回復してきた.
    このような状況を受けて,ひたちなか市が主導して2014年10月1日に,「高田の鉄橋」駅が開業した.新駅の開業に関しては,都市計画や土地利用の視点からの議論は行われてきたが,利用者や周辺居住者の移動行動の変化や新駅に対する評価の検討は,必ずしも十分行われてきたとはいえない.本発表はひたちなか海浜鉄道の「高田の鉄橋」駅について,実際の同駅利用者と同駅周辺居住者の同駅利用状況,同駅開業による日常の移動行動の変化,同駅とひたちなか市の公共交通政策に対する評価について検討することを目的とする. 

    Ⅱ.調査方法
    高田の鉄橋駅の開業が10月1日であり,10月・11月の開業当初は,各種メディアの報道の影響を受けた利用や鉄道愛好者の利用,収集目的の乗車券購入など,開業ブームを反映した需要が想定される.年末・年始も特有の利用が想定される.また,利用者のかなりの部分を占めると考えられる高校生について,卒業年度生の2月・3月利用は減少する可能性が高い.これらの影響を考慮して,同駅利用者の調査は1月末,2015年1月29日(木)に実施した.
    高田の鉄橋駅の実際の利用者を対象に,同駅乗車客,降車客に対して調査票を配布し,利用者自身による記入を求めた.主な調査項目は,乗車区間,利用目的,高田の鉄橋駅開業まで同じ移動目的で使用していた交通手段,同駅の利用頻度,同駅までの交通手段,同駅の評価と感想,回答者の諸属性である.
    高田の鉄橋駅周辺居住者については,隣接する那珂湊・中根の両駅より,高田の鉄橋駅が近いと考えられる住宅地を対象地域とした.これらの地区の1000世帯に調査票を配布し,各世帯単位で日常の移動行動における主な交通手段についての回答を求め,郵送によって回収した.主な調査項目は,高田の鉄橋駅開業の情報入手手段,通勤,通学,など移動目的別の移動手段,湊線列車利用の頻度・利用駅,高田の鉄橋駅に対する感想,湊線存続の可否,公共交通全般に対する財政支援の可否,回答世帯の諸属性である. 

    Ⅲ.調査結果の概要
    高田の鉄橋駅利用者は事前の予想よりも多く,予想利用者数のほぼ2倍程度であると推定される.利用者の約3/4は,通学者・通勤者で,駅周辺の町字居住者である.乗車区間は,勝田までが約90%で,その多くはJR常磐線に乗り継ぎ,同線の水戸や佐和まで利用している.
    同駅周辺居住者の日常の移動行動は,自動車への依存が極めて高いが,通学者,通勤者には湊線の日常的利用者が存在する.その他の利用目的では湊線利用者は限られるが,余暇目的では湊線利用者,利用経験者が半数近くに達する.これらの非日常的な利用者は潜在的な利用者と考えられ,その利用頻度は低いが,余暇利用を中心に利用する可能性が高い居住者が相当数存在する.列車本数の増加には限界があるが,ラウンドダイヤの導入等によって利便性を高め,これら潜在的利用者の取り込みを図ることも重要な課題である.
    高田の鉄橋駅開業については,利用者の評価はもちろん高いが,周辺居住者についても,肯定的な評価が約60%を占めて一応の支持が得られている.ただし,駅に近接する地区と,駅から距離がある地区の評価の差がみられ,駅西側地区の評価が低い.このような傾向は自由記述欄にもみられ,駅の立地が事前の情報よりも東よりあったこと,線路脇の通路が通行禁止となり,西側地区からは県道を迂回しなければならなくなったこと,同地区内にはコミュニティバスが乗り入れていないことなどへの不満が表れている.柳が丘方面から高田の鉄橋駅へのアクセス道路,同駅周辺の道路,駐車場・駐輪場,街灯などの整備を求める意見が多い.
    ひたちなか海浜鉄道の存続については,若干の地区間差がみられるものの高い支持が得られ,高田の鉄橋駅周辺の居住者にとって,利用者,非利用者を問わず,同鉄道は必要な交通手段として位置づけられている.また,同鉄道,
    スマイルあおぞらバス
    をはじめとする公共交通機関への財政支援についても,肯定的な回答が80%以上である.とくに,現状維持とする回答と,より積極的な支援を求める回答がほぼ同数で,後者の回答が上回る地区もみられ,今後の公共交通政策への期待が窺われる.
  • *土'谷 敏治, 安藤 圭佑, 石井 智也, 花井 優太, 八剱 直樹
    日本地理学会発表要旨集
    2011年 2011s 巻 306
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/24
    会議録・要旨集 フリー
     _I_.はじめに
     2002年の乗合バス事業に対する規制緩和以前から,多くの自治体がコミュニティバスの運行を始めた.鈴木(2007)は,コミュニティバスとは,「既存の交通機関のサービスが技術的または経営的理由で行き届かない地域の住民の交通手段を確保するため,既存のバスよりも小型の車両をもって,市町村が何らかの形で関わり,何らかの財政支援を背景として運行される乗合バス」としている.また,1995年に運行を開始した武蔵野市のムーバスの模造品が続出したため,「循環ルート」で「ワンコイン運賃」が常識との認識も生まれていると指摘している.
     茨城県ひたちなか市は,市内の公共交通機関の維持に積極的に取り組んでいる地方自治体の1つである.茨城交通の湊線鉄道事業からの撤退表明を受けて,2008年にひたちなか海浜鉄道として第三セクター化し,2009年と2010年には乗合タクシーの実証運行も行った.さらに,2006年10月から「
    スマイルあおぞらバス
    」というコミュニティバスを運行している.2系統で始まったこのコミュニティバスは,運行経路の変更や増設を経て,2011年1月現在5系統となっている.ただし,上記の鈴木(2007)の指摘のように,運賃100円の循環ルートを運行し,もっも長い系統では,循環ルートを1周するのに1時間50分程度を要する.運行経路などに対する市民の評価も,賛否両論が聞かれる.
     2010年10月,このひたちなか市コミュニティバスについての調査の機会がえられた.本報告では,上記の点を踏まえ,ひたちなか市のコミュニティバスが,市民にどのように利用され・評価されているのかを明らかにするため,利用者数や利用のパターン,利用者の属性や利用の特色,利用者の評価について調査するとともに,今後の課題について検討することを目的とする.
     _II_.調査方法
     利用者数については,ひたちなか市も停留所ごとの乗降数を調査している.ただし,個々の乗客の乗車・降車停留所までは明らかではない.今回は利用パターンを明らかにすることを目指し,乗降停留所を特定して,旅客流動調査を行った.これによって,OD表レベルでの利用者数の把握が可能となる.利用者の属性や利用の特色,評価については,車内で調査票を配布し,利用者自身が記入する方式を基本としたアンケート調査を実施した.ただし,記入が困難な場合については,調査票をもとに調査員が聞き取りを行った場合もある.主な調査項目は,居住地・性別・年齢・職業の利用者の属性,利用目的,利用頻度,コミュニティバスに対する評価などである.
     調査は,5系統のコミュニティバス全便に調査員が乗車し,旅客流動調査と配布・聞き取り調査を行った.旅客流動調査は基本的には悉皆調査である.配布・聞き取り調査については,できるだけ多くの利用者に対する調査を心がけたが,車内空間が狭く,1名の調査員では混雑時や短区間の利用者については調査に限界があるため,悉皆調査とはなっていない.調査日は,平日と土・日曜日の違いを考慮して,2010年10月15日(金),16日(土)の2日間実施した.
     _III_.調査結果の概要
     旅客流動調査の結果,10月15日(金)438人,10月16日(土)478人,2日間の合計で延べ914人の利用者があった.もちろん系統によって利用者の多寡があり,都心部系統の利用者が多い.また,都心部系統や那珂湊系統では金曜日より土曜日の利用者が多いが,他の系統は逆になる.旅客流動は,JR勝田駅の乗降が卓越し,各停留所・勝田駅間の利用が主要なパターンであるが,勝田駅以外では,ショッピングセンターや公共施設,病院,一部の住宅団地での利用者が多い.しかし,その他の多くの停留所では,ほとんど乗降がみられなかった.
     利用者に対するアンケート調査では,2日間で401人から回答がえらた.各系統とも女性の利用者比率が高く,60歳代以上の高齢者の利用が卓越する.利用目的も買い物目的が最も多く,高齢者の利用を反映して通院目的の利用も多い,しかし,都心部の路線を中心に通勤目的の利用がみられ,土曜日には,10歳代を含む若年層の利用や,那珂湊コースのように観光目的の利用も増加する.
     このような点から,極端に長い循環ルートの再編とともに,通勤利用・土休日の買い物利用・観光利用など,いわゆるコミュニティバスの枠にとらわれない路線の設定や対象利用者の拡大を検討していく必要がある.
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