過去数十年間分子情報による系統解析が進み,陸上植物の分類システムは大きく変わった.最新情報をもとに,新しい陸上植物の分類システムと,そこから生まれる新たな課題について紹介した.主な点は,⑴陸上植物はゼニゴケ植物門(タイ類),マゴケ植物門(蘚類),ツノゴケ植物門,ヒカゲノカズラ植物門(小葉類),シダ植物門,裸子植物門,被子植物門という7つの群(植物門)からなること,⑵ツノゴケ植物門が維管束植物の姉妹群であること,⑶マツバラン類とトクサ類はシダ類と単系統群(シダ植物門)であること,⑷現生裸子植物(グネツム類も含む)は単系統群(裸子植物門)であること,などである.また,最も大きな被子植物門は原始被子植物群(側系統群),単子葉植物,真正双子葉植物の3群に分けられ,原始被子植物群のアンボレラ目(Amborella trichopoda1種のみ)が残り全ての被子植物の姉妹群である.更に,被子植物では科の分解,統合,配置換えが進んだ結果,科は446科(うち単子葉植物は81科)を数えるまでに増えた.しかし,10種以下からなる小さな科が全体の33%(148科)を占め,そこに残されている進化の証拠を知るための形態観察(生活史も含む)の研究が遅れている.
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