自動車の走行に伴って大気中に排出される, 大気浮遊粉じん中のタイヤトレッド摩耗粉じんの熱分解生成物であるチオフェン, 2-メチルチオフェンおよび3-メチルオフェンの定量方法について検討した。大気浮遊粉じんの熱分解生成物中のこれら3成分を定量する際に妨害物質になると考えられるものは, 粉じん中に存在する硫酸塩とアスファルト粉じんであるため, これらの除去方法について検討した。大気浮遊粉じん中の硫酸塩についてはその熱分解生成物であるSO
2ピークが大きく現れ, そのテーリングにより, チオフェン類の定量は不可能であったが, 粉じんを捕集したフィルターをイオン交換水により洗浄抽出することで, 粉じん中の水溶性硫酸塩を定量的に (平均抽出効率99.4%) 抽出除去することができ, 3成分の定量が可能となった. 一方, アスファルト粉じん由来のチオフェン類からの妨害についても, ベンゼン/エタノール (4: 1, V/V) 溶液で洗浄抽出することでその妨害をほぼ完全 (99%以上) に除去することができた。以上により, 大気浮遊粉じん中のタイヤトレッド摩耗粉じんの熱分解生成物であるチオフユン, 2-メチルチオフェンおよび3-メチルチオフェンの定量が可能となった。本定量方法を実試料に応用したところ, 大気浮遊粉じん中のタイヤトレッド熱分解生成物である3成分の濃度は一般にチオフェン, 2-メチルチオフェン, 3-メチルチオフェンの順に高かった。
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