同じ時期に近接した会場で行われた2つの性格の異なる博覧会型のイベントのmass gatheringにおける救護所の受診状況ならびに救急車の出場統計を比較し,イベントにおける救急医療の需要と実態について検討を行った。対象としたイベントは,同一の期間(1993年7月17日~9月26日の72日間)に松本市郊外で開催された「信州博覧会」と松本市中心部で開催された「国宝松本城400年祭」の2つのイベントである。両者とも救護所を設け急病者や傷病者の初期治療にあたり,必要に応じ救急車を用い医療機関への搬送を行った。両イベントは,性格が異なるため入場者の構成も同一ではないと考えられたが,救護所の来所者の総入場者に対する割合は,「信州博覧会」で243万8,225人中1,602人(0.066%),「国宝松本城400年祭」で112万658人中686人(0.061%)とほぼ同等であった。救急車による搬送を要したのは,前者で56件であったのに比べ,後者では5件と少なかった。これは集団災害が入場者200万人を越えた「信州博覧会」では3件(ジェットコースターの追突,花火による火傷,シャトルバスの事故)発生したが,100万人規模の「国宝松本城400年祭」では発生していないことによるものと推測された。この2つの大型イベントの比較より,入場者が100万人規模のmass gatheringにおける救護所,救急車出場,集団災害の需要は,ある程度推測可能であると考えられる。
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