都市の汚染大気の生体に及ぼす影響を, 主に免疫学的な側面から明らかにすることを目的として, 外気飼育室 (外気室) と浄化空気飼育室 (浄化室) を備えた動物野外飼育装置を自動車交通量の激しい路傍に設置してラットの長期飼育を行った. ラットの発育の継続的観察および異なる飼育期間 (26, 60, 88週間) における血液学的性状と脾臓およびリンパ節の免疫応答能について以下の成績を得た.
1) 動物飼育室の大気汚染物質濃度の月平均値は, 外気室ではNO
2; 0.020~0.034PPm, NO; 0.024~0.04gPPm, SO
2; 0.007~0.012PPm, SPM; 0.030~0.060mg/m
3で, 浄化室ではNO
2;0.008~0.Ol4PPm, NO;0.003~0.014PPm, SO
2; 0.002~0.005PPm, SPM; 0.017~0.019mg/m
3であった. 外気室の汚染物質濃度は設置地区の環境濃度とほぼ一致していた.
2) 動物の体重変化において浄化室群と外気室群の間に差がみられ, 5~8週齢の飼育開始の初期と, 30~44週齢において外気室群が有意に減少したことが観察された.
3) 血液学的性状では26週飼育実験で外気室群にHt値が低く, Ret出現率が高いことが観察されたが, 全般的に飼育期間をとうして外気室群と浄化室群の間に有意な差異は示されなかった.
4) SRBC抗原腹腔接種後の脾臓およびリンパ節の抗体産生細胞数は, 26週飼育実験では両群の間に差異はなかったが, 60週および88週飼育実験では浄化室群に比べて外気室群に少ないことが示された. とくに, 脾臓の免疫5日後と, 頸部および腸間膜リンパ節の8, 10日後には有意な差が示された.
しかし, 血清の凝集抗体価はいずれの飼育期間においても浄化室群と外気室群の間に差異は観察されなかった.
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