自閉スペクトラム(Autism Spectrum: AS)のある女の子は,特に思春期に関係性の難しさに加えて,「からだ」に関して特有の困難や不自由さを経験する。本実践論文の目的は,思春期のASのある女の子を対象とした親子支援プログラム「あまなつ茶ぁむ」の初年度(2021年度)の試行実践1事例について,特に「身体の内部の感覚や感情への気づきと表現」および「対人関係やコミュニケーションの理解」において参加者が示した困難とそれに対するサポートを検討し,今後の実践へのヒントを得ることである。小学校2年生のASのある女の子とその母親に対して,全4回のオンライン個別セッションを実施した。各セッションの開始前後に,身体の内部の状態について,描画およびチェックリストによって評価した。またセッション中の発言について,その内容を分析した。実践を通して,参加者は身体の内部の感覚や感情を正確に気づいて表現することの難しさがあると考えられた。また,参加者の状況への対処方法の特徴が示された。あまなつ茶ぁむの特長である,「こころ」と「からだ」の両側面への心理教育的なアプローチや,スタッフと参加者の双方向のコミュニケーションによる体験の共有が,本実践の目的にどの程度合致していたのか,また今後の実践計画にどのように活用できるかという点について考察した。
【インパクト】
ASのある女の子は,特に思春期以降,対人関係だけではなく広く「からだ」に関する特有の困難を経験することが示されている。しかしながら,ASのある子どもを対象とした支援や情報は男の子を中心としており,女の子特有のテーマが扱われることが少ない。本実践論文では,ASのある思春期以前の女の子を対象とし,こころとからだの両方の側面からアプローチを行い,今後の実践への示唆を得た。
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