本稿は、F.
ショパン
の3曲のピアノソナタについて、それぞれ第1楽章ソナタ形式の展開部がどのような和声的着想によって構成されているのかを主要な論点とする。その際、特に問題となるのは、ピアノソナタ第2番の展開部が8小節または16小節に整然と区分され、各部分が変化と統一の理念に基づいた明瞭な組織性を示すのに対し、ピアノソナタ第3番の展開部が入り組んだ様々な要素のために混迷の度を深めているように見えることである。ピアノソナタ第2番と比較して、第3番の展開部が分節できない程に複雑な様相帯びる原因はどこにあるのだろうか、また3曲のピアノソナタの展開部における和声的着想には何らかの関連性が認められるのだろうか。本稿は、
ショパン
の各ピアノソナタの第1楽章展開部における調経過の把握と和音分析を通じて、これらの疑問点の解明を試みる。
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